研究課題/領域番号 |
16K03173
|
研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
高田 貫太 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60379815)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 馬韓と倭 / 三国時代と古墳時代 / 日朝関係史 / 前方後円墳 / 考古学 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究会と資料調査を計3回行っている。第1回目は,2017年7月12日(水)~15日(土)にかけて行った。主に、栄山江流域出土の金銅製装身具関連資料の調査である。13日に研究打ち合わせとともに、国立光州博物館において前方後円墳である咸平新徳1号墳出土金銅製冠・飾履の資料調査を行った。第2回目は、国立羅州博物館の国際シンポジウム『羅州新村里金銅冠の再照明』(2017年11月17日)にあわせて、11月15、16日に行った。第3回目は,2017年11月26日(日)~29日(水)にかけて行った。連携研究者の廣瀬氏とともに、主に、栄山江流域で出土している埴輪の資料調査を行った。 このような研究会や踏査を通して、全羅北道東部や忠清南道・北道の一部の地域における集落・墳墓の集成は継続して行っている。特筆すべき実績は次の2点である。 まず、咸平新徳1号墳出土の金銅製冠・飾履の資料調査が実現したことである。資料調査の結果、広帯二山式冠とともに飾履が存在することが確定的となった。これによって、栄山江流域における前方後円墳の造営には、百済との密接なつながりも背景にあることがより明確となった。その成果の一部を、高田が国立羅州博物館の国際シンポジウム『羅州新村里金銅冠の再照明』において発表した。 また,前年度に引き続いて行った栄山江流域出土の埴輪についての資料調査では,調査した円筒埴輪や器材埴輪が,日本列島とは製作技法や形状が異なり,見本もしくは指導する工人が倭から栄山江流域へ伝わり,それに基づいて現地で製作された可能性をより明確に認識できた。特に、連携研究者の廣瀬氏によって、資料調査の中で、栄山江流域の埴輪の相対編年案が提示されている点は重要である。これによって、より具体的に栄山江流域における墳墓の時間的な動態が追跡できるようになった。その成果は、歴博の研究報告に投稿される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より計画していた研究会や踏査を29年度の後半まで順調に行うことができている。また、その成果も国際シンポジウムや論文などで発表することができている。研究代表者の勤務先である国立歴史民俗博物館の研究報告にも、成果の一部が投稿される予定である。 以上の点から、研究はおおむね順調に推移していると判断した。ただし、平成29年度には、ただし、本来予定していた日本における研究会の開催が、諸般の事情で2018年度に持ち越されることになった。この点については、早急に実施するよう準備をしている。また、連携研究者の諫早氏とともに、栄山江流域圏の馬具を中心とした鉄・金銅製品の資料調査も実施する予定であるが、貴重な資料が多いために、資料調査申請の際には研究協力者の李暎澈氏のアドバイスを受けて、支障なく進めていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までの集成・分析作業に基づいて、馬韓社会の構造と対外関係の検討を重点的に行う。また、外来系資料の系譜整理を総括する中で馬韓の対外関係について解釈する。 ① 馬韓の社会構造についての研究:前年度までに集成・分析したデータに基づき、5、6世紀の馬韓の社会構造を検討する。前年度に開始した交通路と墳墓・集落の相関性に加えて、墳墓や拠点的集落の位階、集落の性格(生産遺跡、港湾施設、拠点的集落)を追究し、先行研究から百済や新羅の社会構造と比較することで、馬韓の社会構造の特質を明らかにする。研究にあたっては研究協力者の李暎澈氏(集落)や金洛中氏(墳墓)の協力をあおぐ。 ② 馬韓の対外関係についての研究:前年度まで個別に行ってきた西南部に認められる外来系資料(前方後円墳もふくむ)の系譜検討を総括し、馬韓の対外関係の実態と推移について検討する。具体的には、百済や倭との交渉の比重の置き方、中枢勢力(羅州地域)以外の地域社会の対外関係の実態などを明らかにする。李暎澈氏(土器)、金洛中氏(埋葬施設・副葬品)に協力をあおぎ、連携研究者の廣瀬氏には日韓の埴輪の系統論を中心に、諫早氏には金工品を中心に研究を進めていただく。 ③ 調査と研究会:日韓でそれぞれ1回研究会を開催し、上の①・②について研究内容や進捗度合いについて議論する。その際に発掘調査への参加、資料収集を行い、最新の調査動向を把握する。 この①~③の研究を研究代表者が統轄していく形となるが、今年度に連携研究者、研究協力者全体で協議し、、可能であれば全体的な成果を公開していく方法を具体化していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に日本において研究会を1回開催する予定だったが、諸般の事情により平成30年度に行うこととした。ただし、日程調整が難しい可能性もあるので、その場合は次年度使用額を用いて、1,2週間程度韓国側の研究者を1名招聘して、そこで研究会を行うことも考えている。
|