研究課題/領域番号 |
16K03184
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
梅田 克樹 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20344533)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドイツ / 地理教育 / 教育スタンダード / 静態地誌 / ESD |
研究実績の概要 |
ドイツにおいて現地調査を実施した。ハインリッヒ=ハイネ大学(デュッセルドルフ市)や図書館等において、ドイツの中等地理教育カリキュラム(特に世界地誌学習)の変化と現状、およびその成立過程に関する幅広い資料収集を行った。また、ドイツは連邦制を採っており、州によって教育カリキュラムや教科書も異なっている。それらの内容を把握・比較するために、関係資料の渉猟に努めた。さらに、ハインリッヒ=ハイネ大学の研究者らに対するヒアリングによって、当該課題に関する定性的情報を補充するとともに、次年度以降の円滑な調査実施に向けた協力関係を構築した。 ドイツの中等地理教育カリキュラムは、州による相違が非常に大きい。また、カリキュラムおよびその編成原理に時系列的な変遷はあるものの、項目配列にみられる基本的な特徴については、各州の特徴が長期にわたって維持されていた。学校種による学習内容の差異は相対的に小さく、内容の深浅にみられる差異にとどまっていると言ってよい。また、学校外の教育施設等(社会教育施設やボランティア団体等)が果たす役割は高く評価される。ドイツにおける地理教育の根幹に据えられているESDにおいても、学校外における経験的学習が重要な役割を担っている。 対照事例として、隣国でありながら教育システムがまったく異なるオランダにおいても、現地調査を実施した。オランダにおける環境教育の担い手の実態、とりわけ環境教育のための施設等が果たしている役割について、調査を実施した。学校によって教育内容が異なる同国にあって、博物館等が果たす役割は非常に大きいものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の初年度である平成28年度の主たる目標は、大きく2つあった。第一点目は、関係機関・地理学教室や図書館における資料収集を通じて、中等地理教育カリキュラムの全体像および世界地誌学習の内容把握を行うことである。資料収集のための現地調査に充てるべき時間に制約があったため、十二分な資料収集ができたとは言い難い面があるのは事実である。しかし、重要と思われる資料の収集を進めるとともに、どこにアクセスすれば必要な資料に行き着けるのかを概ね把握することができたのは、大きな収穫である。第二点目は、来年度以降の円滑な調査実施に向けて、しっかりとした現地協力者を確保することだった。この点については、当初の想定になかった現地協力者を確保するなど、想定を上回る成果を得られたものと考えている。 ドイツの地理教育カリキュラムの根幹に据えられている考え方として、ESD(持続可能な開発のための教育)がある。ESDは、教室内で完結するものではなく、学校外にも多くの機会を求めながら実施されている。平成29年度には、ドイツに本拠地を置く国際協力NGOの活動についても調査することができた。日本人を含むさまざまな国籍のボランティアが活動する同NGOは、国際的な医療支援活動を長期間にわたって継続的に実施しており、近隣の学校に対してはESD実践の機会を提供している。同NGOの調査を通じて、より広い視野から研究を遂行することの重要性を認識した。各国の教育システムおよび中等地理教育の全容をしっかりと把握したうえで、その中で地理教育カリキュラムがどのように位置づけられ実践されているのかを、学校という「空間」や地理という「教科」の枠組みにとらわれることなく解明することが必要となろう。このように、研究すべき内容の精緻化を図ることができたのも、初年度の大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はおおむね順調に進捗している。来年度以降も、ニュージーランドおよびフィンランドにおける資料収集やヒアリング調査を実施するとともに、質問紙調査の実施に向けた準備を進めたいと考えている。なお、本年度の成果を踏まえて、学校外活動が果たす役割についても十分に検討してきたいと考えている。
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