研究課題/領域番号 |
16K03184
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
梅田 克樹 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20344533)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中等地理教育 / ESD / ドイツ / フィンランド / ニュージーランド / インドネシア / 環境教育 |
研究実績の概要 |
本年度は海外現地調査を実施せず、日本国内における資料収集等に努めた。第一に、ドイツ・ニュージーランド・フィンランドの高校地理カリキュラムおよび環境教育に関する文献収集を、前年度に引き続いて行った。本テーマに精通した研究者らとの情報交換も積極的に実施した。第二に、これら三ヵ国に共通する深刻な環境問題として、畜産業に起因する水質汚濁および土壌侵食の問題(「畜産公害」)に注目した。三ヵ国ともに、寒冷な気候と豊かな草地資源を活用した畜産業、とりわけ酪農業が、農業における基幹的部門の地位を占めている。しかし、搾乳中の乳用牛は、一日に糞50kgと尿15kgを排出する(肉用牛約2倍に相当)など、環境負荷がきわめて大きい家畜動物である。生徒たちにとって最も身近な環境問題と言える畜産公害が、三ヵ国それぞれの環境教育においてどのように取り扱われているのか、また中等地理教育カリキュラムの中でどのように位置付けられているのかと言う点について、特に注目して資料収集等を実施した。第三に、ESD(持続可能な開発のための教育)のコンピテンシーに基づく中等地理教育カリキュラムの導入に、発展途上国の中では最も早くから取り組んできたインドネシアに注目した。インドネシアの高校地理教育カリキュラムの全体像を把握するとともに、その中でどのような環境教育が行われているのかを調べた。また、本科研によらない渡航機会を活用して、現地における資料収集等も実施した。なお、本年度に予定していたニュージーランド及びフィンランドにおける現地調査は、平成30年度に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の2年目である平成29年度の主たる目標は、ニュージーランドおよびフィンランドにおける資料収集やヒアリング調査の実施であった。この当初目標を達成することはできなかったものの、日本国内およびインドネシアにおける調査を進捗させることができた。また、初年度の現地調査時に収集してきた教科書等や最新のナショナルカリキュラム等について、内容面の整理・検討を進めた。そのほか、現地協力者との人脈を有する関係研究者らとの連携を深め、現地調査のための基盤をより強固にできたことも、重要な成果だったと考えている。ドイツの教育スタンダード(Bildungsstandard)の思想は、日本の新学習指導要領に広く採り入れられており、この観点からの研究蓄積が近年積極的に進められている。フィンランド式教育については、成果ばかりでなく課題を指摘する研究成果も多数得られるようになってきた。ニュージーランドの環境教育については、幼児教育から高等教育までを統合的に捉えた研究が蓄積されつつある。いずれも、中等地理教育に特化した研究群ではなく、また国際比較を念頭に置いているわけではないので、本研究の価値がいささかも損なわれるわけではない。しかし、各国の個別事情に関する研究蓄積およびそれを可能にした人的ネットワークについて、しっかりと活用できる基盤を整えられたことは、平成29年度における重要な成果になったものと考えている。この基盤を活用して、平成30年度以降の研究を引き続き実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はおおむね順調に進捗している。来年度以降も、ニュージーランド・フィンランド・ドイツの三ヵ国および対象事例としてのインドネシアにおける資料収集やヒアリング調査を継続的に実施するとともに、質問紙調査の実施に向けた準備を進めたいと考えている。特に、ナショナルカリキュラムや教科書等の比較・検討について、より内容面に突っ込んだ作業を進めたい。なお、本年度の成果を踏まえて、学校外活動が果たす役割についても十分に検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィンランドおよびニュージーランドにおける現地調査を平成29年度中に実施しなかったため。なお、平成30年度に実施する予定である。
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