平成28年度のドイツ、平成30年度のインドネシア、平成31年度のニュージーランド・インドシナ半島に続いて、令和2年度は中華人民共和国(内蒙古自治区・山西省、9月)およびドイツ(12月)において現地調査を実施した。 内蒙古自治区や山西省では、冷涼な気候と豊かな草地資源を活用した酪農がさかんであり、いまや中国最大の生乳生産地域になっている。しかし、内陸部の宿命とも言うべき砂漠化との闘いの中で、農村地域からの集団移住が国策として推進されているほか、内蒙古草原の商品化に伴って観光開発が急激に進行しているため、伝統的な小規模酪農が次々と廃業に追い込まれている実態もある。このような状況、とりわけ中等学校教育における取り扱われ方について、現地調査を実施した。また、中国有数の産炭地域を抱える山西省においては、炭鉱における労働環境の向上や公害問題の沈静化が顕著であり、その点についての調査も実施した。ただし、全人代を控えた時期だったため、農村調査は十分にできなかった。 12月には、ドイツ西部において現地調査を実施した。ギムナジウムを訪問して授業見学・聞き取り調査を実施したほか、NRW(ノルトライン・ウェストファーレン)州における教科書等の収集・分析を行った。ギムナジウムにおいては、内容の取扱いについて各学校に相当程度の裁量が認められており、教科書にも多数のバリエーションが存在する。それらにおける環境教育の取り扱われ方を比較・検討した。 なお、最終年度のため学会等における成果発表を予定していたものの、COVID-19の影響等により実施できなかった。状況が落ち着き次第、2020年度に実施予定である。 研究期間全体を通じて、環境教育先進国であるドイツ・ニュージーランドのみならず、環境教育の取り扱われ方が急速に変容している東・東南アジア諸国においても調査を実施できた。ただし、質問紙調査の実施は見送った。
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