研究期間の4年間を通じて,全ての商業用原子力発電所の立地地域について現地調査を行い,立地運動から現在に至るまでの行財政・経済・社会・政治についての包括的な資料入手と分析,そして比較検討を行った. その結果,原子力発電所の建設・稼働・原価償却の進行による市町村財政および地域経済の動きと,地域社会・政治の変質過程との関係について,ある種の共通性を見いだすことができた.また,原子力発電所の受け入れ時期の違いが立地市町村間の差異の重要な説明変数となっていることも明らかになった.これは原子力発電所の建設技術の成熟化と,相次ぐ原発事故の発生による,社会の原子力発電所に対するまなざしの変化によって,より隔絶性の高い縁辺部の町村でしか原子力発電所が新規に立地しえなくなったことによるものである. これと並行して,東日本大震災/福島第一原発事故後の福島第一・第二原発立地地域の事故後の動態に関する調査も継続的に実施した.これらの町村では,避難指示解除後も復興のための建設業が地域経済そして人口を維持する上で中心的な役割を果たしているが,それは工事箇所の業者が公共事業を請け負う,という「なわばり」的な原理が復興関連事業(除染作業を含む)においても貫徹されたことによるものであった.そして,近年は復興関連事業の終了を見据えた建設業者の対応が顕在化していることも明らかになっている. なお,成果の公表はもう少し時間をおいて行いたいと考えている.理由は東日本大震災の復興期間(~2020年度)終了後,地域社会・政治がどのような方向に向かおうとしているのかを判断するためには今しばらく時間を要すると思われるためである.
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