研究課題/領域番号 |
16K03189
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
香川 貴志 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70214252)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 震災 / 防災 / 減災 / 防災教育 / 都市復興 |
研究実績の概要 |
2020年度は、前年 (2019)度末に計画していたカナダ国ブリティッシュコロンビア大学デビッド・エジントン名誉教授(記名について本人承諾済み、研究代表者は同教授の著書である”Reconstructing KOBE"を共訳した経験がある。筆頭翻訳者は研究代表者の香川)のご指導のもと、同大学の研究者・大学院生の前で公表を予定していた研究成果報告のための渡航が、新型コロナウイルス感染症(以下ではCOVID-19と記載)拡大により、引き続き実施不可能となった。もっとも、現地のバンクーバー市では一時的に市民や訪問者に対するロックダウンも実施されていたため、成果報告と討論を対面で実施すること自体が不可能であったと思われる。2019年度は年度末に渡航不能となり、航空券や宿泊先の解約での支出があった。そこで2020年度は、感染状況の推移を慎重に見守った。 全地球規模に拡大したCOVID-19の鎮静化は実現せず、2020年度は旧年度中よりもいっそう厳しい事態を呈するようになった。当然ながら、海外渡航は厳しい規制を受け、仮に渡航が認められても、現地到着後と帰国時に各々2週間に及ぶ隔離施設での待機を余儀なくされる状態が続き、本務を犠牲にしてまで海外渡航をするわけにはいかなかった。これらの理由により、当初予定していた現地での成果報告は行えず、再び2021年度までの研究期間延長を申し出るに至った(期間延長はJSPSにより承認済み)。 なお、研究成果の一部を2020年度末に開催された、2021年日本地理学会春季学術大会(オンライン開催)の公開シンポジウムにおいて、コメンテーターとして公表し、岩手県宮古市田老地区の防災対策と都市復興について報告した。また、成果の一部は所属先の大学紀要(2021年9月末日発行)に掲載される予定で、機関リポジトリを通じてフリーアクセスが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度(2019年度)の途中までの研究は順調に進めることができ、全国規模での学会(震災に関わる研究蓄積が多い東北地理学会、防災教育についての共有意識が高い日本地理教育学会など)における複数回の口頭発表、一般市民に対する啓発活動(所属先が主催する公開講演会、新聞社の取材あり)、教員免許更新講習(毎年実施)での研究成果の還元、複数の論文執筆(査読付き雑誌『人文地理』(人文地理学会)を含む)などを行った。 しかし、最終段階のカナダでの研究成果還元が上述したCOVID-19の影響により頓挫した状況に留まっており「(1)当初の計画以上に進展している」と評価するには及ばなかった。こうして研究期間を延長せざるを得なかったため、本研究には順調に進んでいない部分が僅かに残っているものの、海外での成果還元の一部はCOVID-19による海外渡航規制が強化される直前の2019年2月にニュージーランド南島のクライストチャーチで済ませており、現地でも日本の防災・減災への取組を紹介して大きな関心(感心)を得ることに成功した。ただ、クライストチャーチでの2011年大地震(リトルトン地震)は発生メカニズムが兵庫県南部地震に似たプレート内断層型地震であるため、津波対策への関心は日本やカナダ西海岸ほど高くないということも判明した。ニュージーランドでは、プレート内断層型地震に伴う液状化での建物倒壊への懸念が相対的に強く、居住禁止区域に指定され、すでに公園のように化している旧住宅地も散見される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、本研究で対象とした日本、カナダ、ニュージーランドの防災・減災対策、防災・減災教育の比較検討は概ね達成できた。現在残っているのは、書面やオンラインでは伝えにくい地図や図表、写真を多用したカナダでの現地説明及び意見交換だけとなっている。 COVID-19が鎮静化し、研究代表者自らがワクチン接種を済ませ、日本・カナダ両国が市民の往来を許可するようになってから可能な限り早期に渡航して、最後に残された課題を解決したい。 また、研究代表者が毎年夏に担当している教員免許更新講習においても本研究課題で得られた成果を積極的に還元し、初等・中等教育現場へ研究成果を伝えることで、防災・減災教育の拡大と普及に貢献したい。これは研究代表者の所属先の設置理念・趣旨から考えても、学会での口頭発表や学術専門誌への投稿と同等以上に大切な仕事であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
使途の費目が「外国旅費」であり、多用途への流用が不可能なことに加え、COVID-19による渡航規制があるため外国出張(カナダでの研究報告と討論)ができなかったため、当初予算の全額を次年度繰り越し(研究期間延長)せざるを得なかった。このように次年度使用額が生じたのは、研究代表者や先方(カナダ側)の努力では克服できない不可抗力的なものであった。
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