本研究は,地方圏においてイノベーション活動に取り組む機械系中小企業への実態調査に基づき,イノベーション活動の存立基盤とその空間的特性を明らかにした。熊本県内での調査結果によれば,大手企業からの支援と,県域スケールでの濃密な産学官連携ネットワークの存在の二つが,イノベーションを支える地域的な基盤となっていることが判明した。また,熊本都市圏から遠隔地に立地する企業は,産業支援機能の享受やイノベーション人材の獲得を目的として,熊本都市圏内への拠点立地を進める例が観察された。こうしたイノベーションのための立地行動の地域的な意義にも注目すべきことが示唆された。
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