日本企業が多数進出しているアジア新興国では、中国の上海大都市圏やタイのバンコク大都市圏など大都市圏に産業集積が急速に形成されてきているが、アジア新興国の大都市圏は、急速な工業化や都市化に伴った諸課題を抱えており、こうした課題に早くから直面した日本の大都市圏(特に大阪大都市圏)の経験が課題解決に貢献できると考えられる。本研究は、以上の問題意識のもとで、産業立地論の観点から日本企業・関西企業のアジア進出や現地での産業集積形成を実態分析しながら、アジア新興国の大都市圏について、その立地環境上の特性を明らかにするとともに、日本の大都市圏(特に大阪大都市圏)との産業集積ネットワークの状況や今後のあり方を考察することを目的とする。 本研究では、「分析フレームワークの検討」「日系アジア現地法人などへの訪問調査」「アジア新興国の大都市圏に関するデータ資料の整理・検討」の3つが、研究実施計画・方法における柱である。分析フレームワークの検討としては、アジア新興国の大都市圏について、集積状況の形成状況や立地環境上の特性、日本・アジアにおける産業集積ネットワークの状況を調査・分析する際のポイントを整理・検討する。こうした分析フレームワークにもとづき、日系アジア現地法人などへの訪問調査を実施し、またアジア新興国の大都市圏に関するデータ資料の整理・検討を行いながら、アジア新興国の大都市圏の国際産業立地研究を推進するものである。 研究期間中、中国の上海大都市圏、タイのバンコク大都市圏、ベトナムのハノイ大都市圏およびホーチミン大都市圏において現地調査を実施し、アジア新興国の大都市圏の立地環境上の特性などを明らかにするとともに、理論的なインプリケーションや政策的なインプリケーションを導き出すことができた。最終年度は、これまでの調査結果の拡充のため、ベトナムのホーチミン大都市圏における現地調査を再度、実施した。
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