研究課題/領域番号 |
16K03198
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
長尾 謙吉 専修大学, 経済学部, 教授 (50301429)
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研究分担者 |
立見 淳哉 大阪市立大学, 大学院創造都市研究科, 准教授 (50422762)
水野 真彦 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (80305664)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 都市 / 産業集積 / 革新 / 分業 / 距離 / 進化 |
研究実績の概要 |
経済活動の「縮小」が議論されはじめた日本において、他の先進諸国と同様に、革新(イノベーション)を生み出す場所として大都市に関心が高まっている。都市の重要性は、社会科学的のさまざまな分野から指摘されているものの、企業や個人の地理的活動を踏まえた「革新」の研究は十分な研究成果を得ていない。本研究は、「産業集積の多層性と都市の革新性」を課題とし、産業集積が多層的であることが大都市の革新的活動を理解する一つの鍵であるという問題設定のもと、物理的距離と認知的距離に関する本研究メンバーの既存成果を援用しかつ再検討しながら、都市の革新性について探求する。 本年度は、産業集積の多層性と産業活動の変化をとらえる研究視角についての検討と集積への進化的視点の導入について議論をすすめた。 世界の大都市圏の多くは、なんらかの時期において製造業が強力なエンジンとしての役割を果たした。そうした局面において、「距離」として「物理的距離」は重要であった。物流だけを考慮すれば、「物理的距離」の摩擦は大きく低下し、脱工業化が進んでいる。都市はその他の多くの集積タイプとは異なり、文化・社会・政治が生起する場であり、巨大な市場であるなどの固有の特徴を持つ。財・サービスの価値付けを行う装置としての役割も有することを、「認知的距離」と組み合わせて検討した。産業集積のライフサイクルや関連産業への分岐などは、成熟した大都市の考察には不可欠との認識から、集積への進化的視点と、ネットワークにおける近接性を動態的に捉える視点について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究企画やレビューを通じた方法論的議論はほぼ予定通りであるが、実態調査に関する部分はやや遅れている。全体として遅れている理由は、研究代表者が異動し、複数の拠点での活動が続き、新たな研究基盤を整えるのに苦労しているからである。 実態調査については、平成28年度と同様に、ファッション産業やエンターテインメント産業など「創造産業」系では、仕事をめぐる時間が柔軟だがあいまいになっており、調査の段取りに時間がかかるとともに変更がつきものであるからである。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が首都圏に異動することとなり苦労はしているが、三名による共同研究体制は国内出張により大阪や東京で集会を持ち維持していく。 「認知的距離」の遠さをカバーする「物理的距離」の近さは、産業集積の多層性がいかなる形態を示しているかに影響を受ける。オーバーラップ(重なり合う)という視点から産業集積を掘り下げることによって、特色ある研究を目指す。また、オーバーラップが財・サービスの価値付けといかに関わるかを明らかにできれば、独自性が高まろう。 企業や個人を対象とした実態調査について、とりわけエンターテインメント産業での調査は既存研究にないものであり、時間設定をはじめ困難が伴うが、継続して大きく前進させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究代表者の異動、研究分担者の学内所属の変更など、継続して不安定な年度となったためである。また、実態調査が先方都合も含めスケジュール変更等で使用予定を変更や延期することとなったためである。
(使用計画)研究代表者が首都圏へ移動したため、平成30年度には当初予定よりも国内出張に使用する予定である。産業系の特殊な資料類は、購入可能時期との兼ね合いで支出する。資料やデータの整理や図表作成などで、人件費・謝金を使用する。
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