研究課題
2016年度は、アブラヤシ小農に関する情報収集を行うと同時に、2度の現地調査を行った。具体的には、第1回目の現地調査として、9月にタイ南部におけるアブラヤシ小農の卓越地域で行った。この調査では、研究協力者の生方史数(岡山大学)と代表者の祖田亮次が現地訪問し、農業局やその他機関の担当者にアブラヤシ栽培の現状についての聞き取りを行うと同時に、統計的資料を得ることができた。また、いくつかのアブラヤシ小農の農園を視察し、栽培方法や流通方法、土地利用状況などについての聞き取りを行ったほか、農民組合の会議に参加して、現在の小農経営にとってどのような問題点があるのかについて把握することができた。2017年3月には、祖田が単独でマレーシア・サラワク州での現地調査を行った。サラワク州では、アブラヤシ小農のフロンティア地区であるビントゥル省とシブ省の複数の小農農園を訪れ、聞き取り調査を行った。とくに、小農による栽培本数の増加状況や、農園経営の際の労働力調達についての聞き取りを中心に行い、インドネシア人などの外国人労働力が在地社会に入り込んでいる状況について確認した。タイ南部においては、小農育成の観点から、公的機関による様々な支援があり、プランテーションとは異なる形での小農の活性化可能性を見ることができた。また、タイ全体の農業政策のなかにおけるアブラヤシの位置づけについて、一定の資料を得ることができた。一方、サラワクにおいては、公的機関の支援はなく、プランテーション企業との関係性において小農自身のフォーマル/インフォーマルな工夫が経営のあり方を左右していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本年は、フィリピン南部での調査実施を考えていたが、調査対象地の治安情勢の悪化と、研究協力者の状況変化(在外研究で不在)から、調査地をタイ南部とマレーシア・サラワク州としたが、想定していた情報の入手はできた。各地の小農アブラヤシ栽培卓越地域の比較検討の指標として、小農の規模、栽培方法、流通方法、労働力調達、公的機関の支援・助成の有無、従来の正業との連続性/非連続性などについて、一定の情報を得ることができたので、2017年におけるフィリピンでの調査の方法についても、一定の見通しを得ることができた。
2017年度は、マレーシア・サラワク州、およびタイ南部における調査で得られた情報をもとに、フィリピンでの調査項目について再度検討を行う。それらの情報をもとに比較を行うことで、政策的・環境的条件の相違を検討すると同時に、共通点を抽出することで、東南アジアにおけるアブラヤシ小農の成立条件を、より一般性のある形で提示する。2018年度は、これらの情報をもとに、プランテーションー小農関係について議論を進める予定である。
フィリピン南部での調査を予定していたが、治安情勢が悪化したことと、研究協力者(久留米大学・葉山アツ子)が在外研究の機会を得て、本科研調査に時間を割くことができなかったことなどから、フィリピンでの調査を延期することになったため。
フィリピンにおけるアブラヤシ栽培に関する情報収集のために物品費として使用すると同時に、フィリピンでの現地調査を行うための旅費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Biological Conservation (Part B)
巻: 204 ページ: 340-349
10.1016/j.biocon.2016.10.022