研究課題
基盤研究(C)
本研究は南満洲鉄道(以下、満鉄)の本業である鉄道事業について、特に1932年の満洲国成立後を対象に研究を行った。貨物輸送では農産物と鉱産物、旅客輸送では華北からの漢人労働者輸送について解明した。その結果、農産物輸送において大豆に変わり得る品目の不在、鉱産物輸送における大連ー奉天間の輸送輻輳について新知見を加えることができた。さらに漢人労働者輸送においては日本人移民や旅行者を大きく上回る輸送量であったことを明らかにすることができた。さらに教育機関の分布から都市近郊輸送を解明し、さらに並行運河計画と大連-奉天間の輸送輻輳の関係を考察した。
歴史地理学
満鉄は非常に重厚な研究成果をもつ国策会社と信じられてきた。しかし、実際には岡部牧夫の「満鉄は鉄道の運営を第一の事業としていたにもかかわらず,戦後はそれに関する本格的研究が極端に少ない」(岡部編『南満洲鉄道会社の研究』日本経済評論社,2008年, 400頁)のような指摘があり、特急「あじあ」神話が独歩してきた。本研究は、そうした偏った、あるいは誤った満鉄像の修正に寄与することが期待できる。