「伝統的」なモノづくり技術における身体化された経験知に関する事例研究は、文化人類学の分野でも進められてきた。本研究では、技術を持つ当事者(報告者)の視点から、技術が各段階を経ながら身体化される過程を明らかにし、技術の身体化が人の認識に如何に関わるかという内的な部分にまで迫って分析する。それにより、モノを媒介とした身体と認識の相互作用の問題へと切り込み、西洋的・近代的価値判断を基準とした私/我々自身の価値観の再考を促しながら、身体/認識の問題についての人類学的研究における議論を活発にする。さらにそれは、文化資源の持続可能な技術伝承を対象とした分野への実際的な貢献に繋がる可能性を有するといえる。
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