研究課題/領域番号 |
16K03221
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
福浦 厚子 滋賀大学, 経済学部, 教授 (90283548)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 進香 / 游境 / マレーシア / シンガポール / 宗教職能者 |
研究実績の概要 |
寺廟のトランスナショナルな進香活動について、2016年度の研究では、シンガポールとマレーシアの兄弟寺廟を対象に調査を行った。進香とは祖廟である寺廟から、神祇などの超自然的存在を移民する際に分霊し、他国など離れた場所に寺廟を建て、一定の年月が過ぎたのち、機会を捉えて一旦祖廟へ戻し、祭祀を行うことである。その行為には、分霊した神祇などがもつと考えられている超自然的な力が、時間を経ることで弱化したととらえ、祖廟で祭祀を行うことでそれを更新するという理解がなされている。 具体的には、兄弟寺廟の信者が木製の聖旨や神像とともに祖廟を参拝することを指すが、必ずしも祖廟だけを訪問の対象とするわけではない。兄弟寺廟での年中行事に参拝することも、力の更新と考えられている。また、このような機会は信者にとって信仰や開運などにつなげて考えられるため、大勢が参加し、進香団とひとくくりに呼ばれる。祖廟への訪問、祭壇での祭祀のほかに、進香団が司祭や霊媒ら宗教職能者とともに、祖廟の行事で地域を浄化する儀礼(游境)に参加することもある。調査対象の一つであるシンガポールの寺廟は、マレーシアに3か所兄弟寺廟を持っており、そのうちの2か寺とは相互に進香活動を行っている。2016年秋には、シンガポールの寺廟からマレーシアの兄弟寺廟を訪問する進香に加わり調査した。 一番重要な行事は農暦九月に4日間実施され、その1日は游境が行われた。行列は宗教職能者や華人系やタミール系出自の信者、南タイから招かれた舞踊団、地域の中学生らにより構成された。沿道の家庭のなかには、家屋の外に位牌や香炉を仮説の祭壇に並べ、宗教職能者を招き儀礼を依頼する場合がある。水や果物を游境の人びとに提供する人も多く、地域浄化の儀礼と供物を介して、祝福が取り交わされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスナショナルな信仰の広がりについて、兄弟寺廟の関係に焦点をあてて調査を行った。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、マレーシアの社会制度における華人系寺廟、多民族の状況などについて明らかにしたうえで、他の兄弟寺廟の事例について、当該寺廟の信者の視点に立脚し、調査を進めることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入のため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り、夏までに昨年予定していた物品の調達を行い、データの処理を実施する。
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