研究課題/領域番号 |
16K03221
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
福浦 厚子 滋賀大学, 経済学部, 教授 (90283548)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 祖廟 / 進香 / トランスナショナル / 道教系寺廟 / シンガポール / 台湾 / 中国 |
研究実績の概要 |
寺廟のトランスナショナルな進香活動について、2017年度の研究ではシンガポールと台湾の兄弟寺廟を対象に調査を行った。これまでの進香についての理解では、祖廟である寺廟から、神祇などの超自然的存在を移民する際に分霊し、他国など離れた場所に寺廟を建て、一定の年月が過ぎたのち、機会を捉えて一旦祖廟へ戻し、祭祀を行うこととされてきた。 具体的には、兄弟寺廟の信者が聖旨や神像とともに祖廟を参拝することを指すが、必ずしも祖廟だけを訪問の対象とするわけではない。祖廟への訪問、祭壇での祭祀のほかに、進香団が司祭(道士)や霊媒(童き)といった宗教職能者とともに、祖廟の行事に合わせて、地域を浄化する儀礼(游境)に参加することも行われる場合がある。 台湾の兄弟寺廟は祖廟がある中国福建省から地理的に近い距離であるため、中国が1988年に台湾からの住民が大陸の親族を訪問することを解禁した際に、進香団を作って訪問した兄弟寺廟があった。台湾で調査することができた兄弟寺廟は4か寺あり、現在に至るまで台湾へ移民してきた第一世代に関わる人が関与しているところもあれば、事情があって全くゆかりのない人たちが引き継いで運営しているところもあった。 台湾では霊媒によるセアンスが歴史的に禁じられていた時期があったことも影響し、兄弟寺廟4か寺では現在セアンスは行われていなかった。基隆の兄弟寺廟は中国が改革・開放により訪問をできるようになって以来、毎年祖廟進香を行っている。移民第一世代やその親族は高齢化し、現在は父祖の地に縁のない人たちが主となり進香を行なっている点は昨年調査したマレーシアやシンガポールとは異なる点として挙げておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のとおりに調査対象寺廟の台湾にある兄弟寺廟を選定し、各兄弟寺廟に事前に調査の趣旨を連絡し、これまで行われてきた中国の祖廟への台湾からの進香活動について聞き取ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象となっている寺廟にとって、中国の出身村にある祖廟への進香活動について調査をすることによって、移民先の東アジアや東南アジアにある寺廟と中国の祖廟との人的関係や超自然的存在の彼らとの関係についてトランスナショナルな視点から検討することにしたい。
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