本研究は、日本の3つのけんか祭り、すなわち富山県高岡市の伏木曳山祭、静岡県周智郡森町の森の祭り、兵庫県尼崎市の築地だんじり祭りを事例として、これら3つの祭りが高度経済成長期に警察やマス・メディアといった外部機関からその荒っぽさを批判され、より安全で穏やかな祭りへと変容していったプロセスを詳細に明らかにした。これらの事例において注目すべきは、地理的に離れた3つの祭りが、似たような時期に似たような理由で批判され、変容を迫られた点である。こうしたことからすると、高度経済成長期とは、祭りに潜む暴力性を告発し、その改変を迫る時代であったと指摘することができよう。
|