研究課題
基盤研究(C)
本研究では、アラスカ州南西部の先住民村落における伝統ダンスの伝承活動の歴史を再構成することで、先住民の文化継承の特質を探った。その結果明らかになったのは、文化伝承実践が知識や技術の享受という一方向的なものではなく、学習した知識に基づく主体的な文化の創造に対する承認・非承認というフィードバックを含んだものであること、先住民の文化伝承が社会経済変化、主流社会文化の影響の大きさ、伝承実践の中心となりうる個人、といった要因を考慮すべきであること、である。
文化人類学
アメリカ先住民を対象とした先行研究は、先住民にとっての文化的差異は重要な政治資源であること、ならびに伝統文化の政治利用については、先住民社会の内部でも様々な議論があると指摘している。本研究はこれら先行研究の指摘を踏まえ、これまで一面的に描かれる傾向があったアラスカ先住民の文化継承過程を、古老と若者という非対称な関係性にある両者の営為を視野にいれながら再構成することができた点に学術的意義がある。