研究課題/領域番号 |
16K03230
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
加藤 恵津子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10348873)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アジア(人) / 複数形のアジア主義(Asianisms) / 英語圏 / 日本人 / グローバル化 / 若者 / 仕事 / 自己 |
研究実績の概要 |
1)学会発表。日本文化人類学会第52回年次大会(於 弘前大学)にて「『方法としてのアジア』再考:シンガポールは、若い日本人移動者とその研究者に何を教えるか?」、およびオーストラリア・アジア学会(於 University of Sydney)にて"Asianisms in Motion: Japanese Migrants (Re-) encountering Asian Self in the Pacific West and East" を、それぞれ日本語と英語で発表した。 2)シンガポールとクアラルンプール(マレーシア)での二週間の現地調査。その中心は、シンガポールで5人(昨年からの累計40人)、クアラルンプールで7人の日本人一時労働者(20~40代)に行ったインタビュー(うち一人はメールインタビュー)である。加えて、同年代のシンガポール人3人(昨年からの累計5人)にもインタビューを行ったことで、彼ら・彼女らの「アジア観」と、日本人インフォーマントのそれとの対比が浮き彫りになった。またアジアに展開する日系人材会社社長やJETRO所長、留学エージェントとも意見交換を行い、アジアで働く日本人を取り巻く一般的状況をさらによく把握することができた。 3)論文の出版。『アジア文化研究』45号(国際基督教大学アジア文化研究所紀要)にて、論文「個人化される『方法としてのアジア』:シンガポールの日本人、そしてシンガポール人は『アジア人』か」(pp.45-62)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度末の3月に最後の現地調査を行う計画であったが、研究代表者が勤務大学で行政職に就いたため、3月に日本を離れることができなかった。このため助成期間を1年延長し、最後の現地調査を2019年度夏に行うこととした。また、2016年夏の手術入院後の回復に時間がかかり、ヨーロッパ等の遠隔地の学会に参加できなかった。このため、2019年夏にポーランドで行われる学会に参加する。
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今後の研究の推進方策 |
1)シンガポール人へのインタビューのさらなる充実。 日本人インフォーマントに関しては、論文等を執筆するにほぼ充分なデータを得たと思われる。しかし、参考までに行ったシンガポール人へのインタビューが、思わぬ重要な視点をもたらしてくれたため、シンガポール人インタビュイー数をもっと確保する必要性を強く感じた。このため2019年夏の最後の現地調査では、シンガポール人15名にインタビューを行うことを目指す。
2)シンガポール社会の参与観察のさらなる充実。 シンガポールでは、国民行事として7月21日にRacial Harmony Day、8月9日にNational Dayが行われる。前者は「国民」を形成する諸民族(中華系、マレー系、インド系、ヨーロッパ系とアジア系の混血)の融合を強調するために、学校で生徒たちが他の民族の衣装を着るなどのイベントのある日、後者はマレーシアからの独立記念日(建国記念日)である。これらの行事のいずれかに重なるよう現地に滞在し、「アジア」という語がどのように使われるかを観察することで、シンガポールの国家政策としてのアジア主義を分析したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、当初、2018年度末の3月に最後の現地調査をする予定だったが、勤務先の大学で行政職に就いたため、3月に日本を離れることができなかった。このため助成期間を一年延長し、2019年夏に二週間ほど、シンガポールにて最後の現地調査を行う予定である。また、2016年度に手術入院をし、その回復期をふくむ期間、計画していたヨーロッパ等の遠隔地の学会に参加することができなかった。しかし現在では回復を遂げたため、2019年8月末にポーランドのポズナン市で開催される学会 International Union of Anthropological and Ethnological Studies, Inter-congress 2019 にて研究発表を行い、予算を使用する予定である(すでに発表内容は受理され、参加登録済み)。
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