本研究は、近年、欧米の一部の国で徐々に認知されるようになってきた性的マイノリティ(LGBTIQ)の新たな子どもの作り方ないし育て方、「共同養育」(co-parenting)に注目し、現在、世界的な規模で進行している親子・家族・結婚の変動とその背景にある「性」(sex、gender、sexualityなど)のあり方の変化の実態の一端を実証的な調査研究を通して明らかにすることを目的とする。そのために、日本とともに、この種の共同養育がもっとも急速かつ広範に拡大しつつあるアメリカやオランダ等において現地調査を実施することとし、共同養育を実践する性的マイノリティ当事者にインタビュー調査等を試み、新たな親子・家族・結婚観や「性」のあり方の実態ないし可能性を実証的かつ理論的に検討することを目論んでいる。研究期間を延長した第4年目の令和元(2019)年度は、本研究計画の第3段階を継続するものとして、平成28(2016)年度~平成30(2018)年度に実施した調査研究成果を反映しつつ関連文献の批判的検討を行って各国の性的マイノリティが実践する共同養育やその結果として形成される拡大家族の現状をまとめるとともに、現在世界的規模で進行している親子・家族・結婚観及び制度の変動の観点から調査資料を分析し、性的マイノリティが実践する共同養育や拡大家族が親子・家族・結婚観や制度をいかに再編、再構築しつつあるのか、あるいは、再編、再構築する可能性があるのかを文献研究を通して理論的に検討した。また、令和2(2020)年3月には、オランダ・アムステルダム及びライデンにて「共同養育」を実践するレズビアン及びゲイカップルにインタビュー調査を実施し(新型コロナウィルス感染症の拡大に伴いインタビューの一部はSkypeないしZoomのテレビ会議として実施)、共同養育の実態に関するデータを収集した。
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