研究課題
基盤研究(C)
本研究では、備中神楽、大里七夕踊、石見神楽および芸北神楽の3つの民俗芸能の事例の実証的な調査に基づき、あわせてアメリカ民俗学の創造性に関する議論などを参照しながら、様々な工夫や即興的な改変を加えて「より良いもの」を生み出そうとする創造行為の積み重ねとして成り立つ民俗芸能の伝承の実態を明らかにした。この作業を通して、卓越した個人の才能による創造性とは異なる、人びとの共同的な相互行為によって発揮される創造性に注目し、民俗学における「伝承と創造」という対立的な見方を乗り越える可能性を考察した。
民俗学
民俗芸能の伝承の危機が伝えられることが多い現在において、過度な「伝統」の重責を背負うのに代わって、それぞれの時代に即した工夫や創作こそが、これまで民俗芸能を伝えてきた原動力であり、これから次の世代に伝えるためにも必要であるということを、学術的な考察を通して示唆することができる。また近年大きな社会的関心を呼んでいる無形文化遺産の保護などの背景にある「生きている伝統」のあり方の具体的な姿を、実証的な調査研究の成果から学ぶことが可能になる。