本申請研究の最終年度は、これまで行なってきたフィールド調査の補充調査及び確認調査を中心とした。 本年度の主なフィールド調査地は、これまでの年度と同様に滋賀県を中心とし、特に、湖東・湖南で両墓制と火葬墓制のフィールド調査を行なった。ここで中心的課題としたのは、浄土真宗地域の墓制である。滋賀県の浄土真宗地域では、古くから民俗的火葬墓制を継続してきた集落が多く、それと両墓制との比較を行なうフィールド調査を計画し、実行に移した。また、これらの調査から判明してきたことは、この地域の浄土真宗村落では、現在でこそ、市町村火葬場を利用しての火葬を行ない、石塔墓地への納骨が一般化しつつあるが、近年までは、石塔墓地を持たない無墓制であるばあいが多いことであった。また、それらの村落では、無墓制であるだけではなく、位牌を持たないばあいも多く、これについては、現在でも継続しているばあいが圧倒的に多いことも判明した。それとともに、伝統的な民俗的火葬墓制をとる浄土真宗村落が無墓制で、無位牌葬送儀礼であるのに対して、浄土真宗以外、他宗派の村落では両墓制をとり、石塔墓地を形成していることも判明した。 これについては、この申請研究の第一年度以来、もっとも重視してきた調査・研究課題であり、その成果として、すでに、『火葬と両墓制の仏教民俗学』(2018、勉誠出版)・『天皇墓の政治民俗史』(2017、有志舎)にもまとめており、そこで指摘した内容の確認と補充調査の意味をも持っている。
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