研究課題/領域番号 |
16K03237
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大橋 健一 立教大学, 観光学部, 教授 (70269281)
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研究分担者 |
和崎 春日 中部大学, 国際関係学部, 教授 (40230940)
長坂 康代 愛知東邦大学, 経営学部, 非常勤講師 (00639099)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベトナム / 移動・越境 / 生活戦略 / コミュニティ形成 / アフリカ人 / 社会主義ネットワーク / 都市人類学 |
研究実績の概要 |
現代世界のグローバル化を前提として「移動」による急速な生活圏の広がりがもたらす諸問題への民衆的適応が生み出す文化創造と共同性創出の動態を、ベトナム―日本・アジア・世界の関係系に着目し、ベトナム都市民衆の生活動態から解明するため、ベトナムをめぐる「移動」に関する歴史的・理論的研究およびその実態に関するフィールド調査を実施した。 平成28年4月には本研究の理論枠組の検討および研究調査計画の打ち合わせを行なうため研究会を開催し、その上で代表者および分担者が各地においてフィールド調査を実施した。代表者・大橋は、ベトナム・ホーチミン市および中国・香港でフィールド調査を実施し、ベトナム都市民衆の「移動」経験の資源化について知見を蓄積すると共に、ベトナムをめぐる「移動」の歴史およびその理論枠組についての文献調査とその検討作業を行なった。分担者・和崎は韓国・ソウルでアフリカ人およびベトナム人移動者の生活戦略比較に関して、ベトナム・ハノイでスポーツ界におけるアフリカ人移動者の活躍に関してフィールド調査を実施し、グローバル化する都市社会におけるベトナム―アフリカ間の接触と交流の実態を把握した。分担者・長坂は、ベトナム・ハノイ、韓国・ソウル、台湾・桃園においてベトナム人移動労働者に関するフィールド調査を実施し、ベトナム人移動労働者のコミュニティ形成の特徴を解明した。 これらの調査研究作業を通して、本研究が解明すべき問題の焦点がさらに具体的に明確化され、次年度以降の調査研究作業の見通しを得ることができた。平成29年2月にはこれらの作業から得られた成果の一部をシンポジウムにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に掲げた「移動」への民衆的適応が生み出す文化創造と共同性創出の動態の解明という課題について、本年度はベトナム、韓国、台湾、中国(香港)の各地で実施したフィールド調査によって具体的な多くの知見を蓄積することができ、また、文献研究を通して世界的な研究動向の中での本研究のポジションを確認し、その先端性を意識しながらさらなる理論的検討を進めることができたため、本研究はおおむね順調に進展していると認識している。 一部、当初の研究実施計画で予定した調査対象フィールドを研究の進捗に応じて変更したが、これは研究課題の明確化と研究内容の深化を図るための措置であり、これにより主要調査研究フィールドにおける調査への注力がさらに可能となり、より詳細な成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度の調査研究から得られた成果を踏まえ、さらなる研究内容の深化を図るため、以下の調査研究を推進し、知見を蓄積する。 代表者・大橋は、本年度の成果から、関連する世界的研究動向を踏まえた本研究の先端性を追究しうる今後取り組むべき課題としてベトナムをめぐる「移動」における社会主義ネットワークの重要性を導き出した。これを踏まえて、ロシアおよびベトナムでのフィールド調査を本格化させる。分担者・和崎は、本年度のベトナム・ハノイにおけるフィールド調査の成果を踏まえて、ハノイ・タヒエン地区を中心にアフリカ人の活動を調査し、ベトナム―アフリカの交流状況の調査研究を進展させる。分担者・長坂は、ベトナム人移動労働者のコミュニティ形成の実態について台湾・桃園を中心にフィールド調査を本格化し、本年度行なった韓国でのフィールド調査の成果との比較研究を行なう。また、東アジアだけでなく東南アジアにも拡大するベトナム人の労働移動の実態を踏まえ、特にマレーシアに関する調査も行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究を進める中で、関連する世界的研究動向を踏まえた本研究の先端性を追究しうる重要課題としてベトナムをめぐる「移動」における社会主義ネットワークの解明というテーマが導かれた。この課題に本格的に取り組むためには、当初の計画以上に本格的なロシア(および旧ソ連)での調査が必要となることが判明したため、本年度の一部使用予定資金を次年度に繰り越し、次年度に本格的な調査をロシア(および旧ソ連)において実施し、資金を有効に活用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、ロシア(および旧ソ連)における本格的な調査実施のために使用する。
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