研究課題
本研究は、グローバル化を前提に移動による急速な生活圏の拡大がもたらす諸問題への民衆的適応が生み出す文化・共同性創出の動態を、ベトナム―日本・アジア・世界の関係系に着目し、都市民衆の生活動態から解明するため、ベトナムをめぐる移動の実態に関する調査を多面的に実施した。最終年度の平成30年度、代表者・大橋は、ベトナム・ニャチャンにおける旧ソ連を媒介とした社会主義ネットワークを背景に形成された観光エンクレーブに関する実態解明と分析をさらに進めるため、ベトナム・ニャチャン、ロシア・モスクワにおいて現地調査を実施した他、ロシアからの観光移動が顕著であるタイ・プーケット及びパタヤにおいて比較分析のための現地調査を実施し、ベトナム・ニャチャンをめぐる人の移動と場所への意味付け、そこを媒介に展開するネットワークの特徴を明らかにした。また、その成果の一部をロシア・モスクワ国際関係大学、タイ・マヒドン大学での国際会議で発表した。分担者・和崎は、ベトナム・ハノイ及び近郊において現地調査を実施し、日本ーベトナム間に展開する移動の実態を特に工芸品商人やエネルギー企業等の商業・企業活動を中心に把握し、日本ーベトナム間の移動の往復的・反復的動向を明らかにした。分担者・長坂は、ベトナム・ハノイ及びホーチミン、台湾・台中において現地調査を実施し、ベトナム人の国際労働移動及び移動先社会でのコミュニティ形成の実態を解明し、村落・都市・国外を結ぶ移動の連続性、国内移動と国際移動の相互連関を明らかにした。研究期間全体を通して本研究は、現代世界の移動の重要な結節であるベトナムをめぐって、多様な方向と形態をもった多様な移動が展開し、その錯綜性の中に都市民衆が移動性を織り込んだ生活戦略を創出していることを明らかにした。この成果は、移動性を高める現代の社会文化の動態的理解への寄与において重要な意義をもつものと言える。
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