研究課題/領域番号 |
16K03241
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
中原 聖乃 中京大学, 社会科学研究所, 研究員 (00570053)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マーシャル諸島 / 核実験 / 賠償文化 / 被害認識 / 相互理解 / 科学者 / 医師 |
研究実績の概要 |
本研究は、ロンゲラップ避難者や米国人科学者・議会関係者に対する参与観察とインタビューを主として、会議議事録、科学論文などを読み解きながら、ロンゲラップ共同体が希望する生活を回復できない理由を明らかにする文化人類学的研究である。放射線被害の賠償の行き詰まりの原因を、権力差ではなく、双方の関係者を含む広い文脈でとらえ、社会・文化的背景や論理をあぶり出し、その絡み合いを相互理解/不理解のプロセスとして考察する試みである。 研究は、(1)マーシャル諸島ロンゲラップコミュニティの生活調査、(2)マーシャル諸島賠償文化に関する調査、(3)米国賠償文化に関する調査の三つを柱としている。 初年度である平成28年度は、(1)に関しては、ロンゲラップ被ばく者の海外在住者に対して、故郷に対する認識や被害者意識について調査を行った。この被害者意識については、米国で開催された応用人類学学会でThe Perception of Radiation Disaster in the Marshall Islandと題する報告を行った。また、(3)のための一次資料収集を行った。米国公文書館では、写真資料を収集するとともに、当時のロンゲラップの人々の記録映像を入手できた。またヒューストンメディカルセンターにおいて、ロンゲラップの疾病調査にかかわった医師のメモや手紙などを入手した。また、この学会では核問題に関する三つのセッションが行われ、核問題を研究する研究者との人脈を構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず(1)マーシャル諸島ロンゲラップコミュニティの調査については、わずか3日間であったが、米国に移住した人々の調査を行うことができ、調査地周辺のマーシャル人に対するインタビューを行った。米国在住マーシャル人のコミュニティ形成が明らかになった。今後は、このコミュニティ形成を米国の移民政策や社会保障と関連づけることで、人々が米国に求めるものを明らかにしていく。ただし、マーシャル諸島のロンゲラップの人々の避難地であるメジャト島への調査は、島へのアクセスの悪さから実行出来なかった。航空便やチャーター船の日程の関係から、最低でも40日の確保が必要であり、授業を行いながら、調査日程をどう確保していくのかが今後の課題である。 (3)の米国の賠償文化に関しては、資料を公文書館にて収集でき、メディカルセンターでは医療従事者の日記や手紙などを入手できた。しかしながら、医学データがどのように政策に結びついていくのかという点は、明らかに出来なかった。 なお、(2)については未着手である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)マーシャル諸島ロンゲラップ環礁避難コミュニティにおける生活実態調査を行うとともに、(2)賠償意識についても調査を行う。また、(3)米国の賠償文化については、過去に収集したデータを元に分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度をまたぐ出張が生じたため、年度内に支払い処理できた航空券以外の残金が次年度繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
年度をまたぐ出張中の航空券以外の費用を、残金で支払うこととする。
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