研究課題
平成30年度は研究代表者・研究分担者それぞれに各研究を個別に深めていくことになった。研究代表者の高木は、日本口承文芸学会会長として学会運営に関わりながら、当該研究を当学会員に向けて発信するほか、日本国語教育学会などにも発信する試みを行い、また、テレビ番組出演などでも昔話が時代に即して変化していることを紹介した。論文では、雑誌『子どもの文化』に「『赤い鳥』童話と昔話伝承との共=競演―「それから」「どのように」なったのか―」を発表した。そこでは、昔話はその口承というメディアが音の発された後に残らない性質から「それから~、それから~」と一直線に語り進めることを紹介した。それに対して文字メディアによって表現される『赤い鳥』等の童話は、何度も読み返すことができる性質によって「どのように」「なぜ」という叙述が発達していると説いた。その上で、この両者が近代の社会状況の変化を受けて、20世紀以後、口承の昔話に「どのように」という叙述が入り込んできた一方、書記の童話に口承の特長をとりこんだ「それから~」の叙述が入り込む、いわば昔話と童話との交錯がみられることを説いた。すなわち、「我が国の伝統文化」の一類とされる「昔話」にもそれぞれの時代の刻印が記されていることを、教育において活用するときには自覚的にならなければならないと見た。また、2018年12月14日に行われた第75回日本口承文芸学会研究例会でのシンポジウムにおいてパネルとして行った「母と子との民話―関敬吾の原郷から―」では、関敬吾が昔話は変化し続けるのは自然なことであり、特に近代では目に見る昔話が盛んになってきたという発言を紹介しつつ、柳田國男が設定した問題意識から動いていく昔話の現在の状況を論じた。なお、この議論は2019年8月18日の日本国語教育学会全国大会幼保部会での講演・語りの公演においても引き続き論じられる予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
子どもの文化
巻: 50巻11号 ページ: 56-73
口承文芸研究
巻: 42号 ページ: 202-206
人文科学論集
巻: 98号 ページ: 21-37
総合福祉科学研究
巻: 10号 ページ: 39-47
開智国際大学紀要
巻: 18号 ページ: 149-158
東京成徳短期大学紀要
巻: 52号 ページ: 51-62
高千穂論叢
巻: 53巻4号 ページ: 1-24
神戸大学文学部国語国文学会国文論叢
巻: 54号 ページ: 26-36
巻: 42号 ページ: 94-105
月刊国語教育研究
巻: 54巻562号 ページ: 56-57
関西福祉科学大学紀要
巻: 22号 ページ: 25-34
巻: 53巻557号 ページ: 56-57
一般財団言語教育振興財団 研究成果報告収録
巻: 20号 ページ: 62~63