本研究プロジェクトで次の点を明らかにした。明治20年代後半以降、テングサ資源の減少、中国向け寒天輸出の増加、原料テングサの需要の高まりなどを背景に、北海道の利尻・礼文島に三重県志摩地方の海女がテングサ採取を目的に来道し、採取に従事するようになった。また、同時期以降の北海道沿岸部において、濫獲によりアワビなどの磯まわり資源の枯渇化が進んだことから、北海道庁は資源の保全を図る一方で、大正期には北海道水産試験場が中心となって利尻・礼文島でアワビの移殖試験を実施し、アワビ資源の回復を試みた。この移殖試験には、三重県志摩地方出身の海女が雇われ、「種アワビ」の採取及び利尻・礼文沖合での放入作業に従事した。
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