本年度は、前年度と同様に、さらに対象を広げた関係各所への史料調査を実施するとともに、東京およびその周辺地域を中心とする地方市史等に断片的に収められている江戸の都市法制に関連した史料を収集した。そして、その収集・整理したデーターに基づきながら詳細に検討・考察を加えたが、その際には、以下の点について十分留意したものである。 第一点は、司法関係の史料を含めた行政、立法に関する広範な史料について分析の対象とすること、第二点は、特に行政に関する史料については、出された結論のみでなく、そこに至るまでの立法過程やその後の運用過程の状況についても、視野に入れながら考察すること、そして、第三点は、司法関係の史料についても、導き出された結論(判決や判決文)だけではなく、いわゆる出訴から判決に至るまでの一連の手続き(裁判手続き)の特色についても注意を払う、といった諸点である。 以上の方法により、都市法における「行政法規」の特質と実務役人、すなわち江戸において与力や同心の果たした役割について、先行研究においては必ずしも十分に注目されていないと思われる点を明らかにすることを念頭に置きながら、その全体的な把握に努めているものである。それは、上記の一連の過程を経た後にはじめて近世都市・江戸の都市法の全体像の特色について可能なかぎり客観的な評価ができると考えているからである。 そして、現在では、上記の史料についての史料紹介の準備を行っているところである。
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