日本近世における宗教をめぐる紛争とその解決に関する研究は少なく、議論も幕府・朝廷の主導権争いという枠組に止まっていた。これに対し、申請者はかつて神社紛争において、幕府・朝廷双方による交渉で解決方法を決定していたことを明らかにした。交渉に基づく紛争解決が生まれた歴史的背景は、朝廷の力を希求する新たな社会の動きとそれに対応した朝廷による紛争解決機能の変化にあるのではないか。 本研究では、京都・上賀茂神社を対象に、18世紀における諸紛争の構造を朝廷との関係を中心に明らかにするとともに、紛争をめぐる朝廷・幕府の裁判と朝幕交渉とを検証し、朝廷の紛争解決機能の変化とその政治的・社会的背景を追究した。
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