研究課題/領域番号 |
16K03256
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
源河 達史 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10272410)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教会法学 / 中世 / 文献学 / 写本伝承 |
研究実績の概要 |
2016年7月にパリ(フランス)で開催された第15回中世教会法国際学会において、『グラーティアーヌス教令集注釈書Summa Monacensisならびに関連する諸注釈書について』と題する研究報告を行った。この報告は、Summa Monacensisを中心として12世紀後半の北フランスで成立した一群の教会法史料を対象とし、その相互関係(派生関係なのか、共通のソースを持つのか、等)を考察したものである。具体的には、①対象となった一群の教会法史料はSumma Monacensisから派生したのではなく、共通のソースを持つこと、②このソースには少なくとも2つの発展段階があり、史料によりどちらの発展段階を伝えているかが異なること、③出発点には口述伝承があること、という3つの仮説を提示した。これは、12世紀後半の北フランスにおける教会法学の具体像、すなわち、法理の内容のみでなく学問としての形成の場、いわば教会法学の「生態系」を明らかにする上でも重要な知見である。同報告は同名の研究論文(Die Summa Monacensis und ihre verwandten Summen)として発表する。 この他、アラス(フランス)市立図書館所蔵の写本Arras 1604 (271)の調査を行った。これにより、①同写本がSumma Monacensisのボローニャ(イタリア)における伝承を明らかにする史料であること、②例えばLittera formata(定型文)と呼ばれる公文書式の説明において、法学文献の伝承の仕方(意図的な書換など)を知る上で重要な実例を示す写本であること、が明らかとなった。この写本についても研究論文を発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の課題であったSumma Monacensisとその関連史料群については、相互関係に関する考察を国際学会で報告し、国際的な学問水準で論じることができた。しかし、同史料群が派生関係に立つのではなく共通のソースの異なる発展段階を伝えている場合、どのテクストがどの段階を表すのか、共通のソースが持つ一つ一つの層strataを明らかにする必要があり、校訂版作成は当初の予想よりも複雑な作業となる。
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今後の研究の推進方策 |
Summa Monacensisの諸写本については1年目の課題をほぼ達成できたため、関連する史料群の写本伝承の解明を進める。また、オクスフォード写本Barlow 37の欄外に書きこまれた注釈とSumma Monacensisの関係を明らかにし、12世紀末のイングランドにおける教会法学の受容について、7月のリーズ国際中世史学会にて報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
野村財団の補助金を得られ、学会報告ならびに写本調査に係る旅費をそちらから捻出することができたから。2017年度は、リーズ国際中世史学会(イギリス)にて報告を行うための費用(参加費、旅費)ならびに写本調査に係る旅費等、全て科研費から支出される予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
学会参加費ならびに写本調査に係る旅費 800,000円 物品費、その他(写本の画像資料入手費用)240,000円
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