研究課題
2019年度は、グラーティアーヌス教令集註釈書Summa Monacensisと、親縁関係に立つ著作群との、相互関係の解明を中心に研究を進めた。2016年度の研究成果において明らかにした通り、Summa Monacensisの校訂においては、親縁関係に立つ著作群の利用が不可欠である。すなわち、誤字脱字や物理的な欠損など、現存写本の壊れている部分を、親縁関係に立つ他の著作により復元しなければならない。しかし、親縁関係に立つ著作のテクストは、必ずしも細部に至るまでSumma Monacensisと一致しているわけではない。そのため、Summa Monacensisの壊れた箇所を他の著作によって補うことが可能か否かは、慎重に判断されなければならず、何よりも、Summa Monacensisと復元のために使われる著作との相互関係に関わる問題、例えば、派生関係なのか、同じ著作の異なる版なのか、どちらがより早い段階を表し、どの程度の加筆修正が加えられたと考えられるか、等が解明されなければならない。この問題を考える上で鍵となったのが、2017年度、2018年度にかけて行った、オクスフォード大学ボドリアン図書館所蔵写本Barlow 37と、アッラス市立図書館所蔵写本271の調査である。これにより、オクスフォード写本に伝えられる著作が、1170年代から1180年代にかけて、当該著作群がどのように発展したかを考える上で枢要な位置を占める作品であること、アッラス写本がSumma Monacensisそのものの伝承を考える上で貴重な写本であることが、それぞれ明らかになった。これらの成果をまとめ、学術誌上に論文として発表した。
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Bulletin of Medieval Canon Law
巻: 36 ページ: 275-297
10.1353/bmc.2019.0011
New Discourses in Medieval Canon Law Research. Challenging the Master Narrative. Medieval Law and Its Practice
巻: 28 ページ: 83-104