裁判前後の地域社会の状況、裁判外の利害関係者・周辺地域社会の動向をも含む、紛争解決過程全体の具体的解明によって、「徳政令」に代表される非局所的法に基づく裁判が地域社会の日常的秩序形成・維持構造において果たし得た役割の変化、非局所的法と日常の行動規範との関連性の変化、すなわち14世紀日本における紛争解決過程の変容を実証的に明らかにすることが本研究の目的である。 この間、13世紀後半から14世紀を対象に、「御厨興行令」等を含む非局所的法に関連する裁判事例の集積を行ってきた。特に14世紀半ばの「応安半済令」については、これまで採り上げられなかった事例を新たに加えるとともに、個別事例に即した関係史料の収集及び検討によって、同法令の適用事例とするには不適当と思われるものを析出した。最終年度にあたる今年度は、これら集積した事例相互に加えて、類似の事案でありながら法の適用が求められない事例、さらに、13世紀末から14世紀初頭の「徳政令」「神領興行法」等の事例との比較も行い、この間の変容について検討を行った。 今年度も関連史料の補充調査及び史料編纂所未調査史料の調査として、神宮文庫・岩瀬文庫・三重県総合博物館等において史料の調査・撮影を行った。撮影史料のうち、所蔵者の許可を得られたものについては、史料編纂所のデータベースを介して順次公開される予定である。また、未紹介の重要史料については、引き続き個別に史料紹介を行いたい。
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