研究課題/領域番号 |
16K03260
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘子 名古屋大学, 法学研究科, 特任准教授 (90340364)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | アジア法 / 家族法 / 親子 / 子ども / 親権 / 監護 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究実施計画としてあげていた2点については、次のような実績をあげた。 (1) 南アジアの親子法調査 9月15日~18日にムンバイのインド工科大学ボンベイ校を訪問し(Partthasarathy教授との面談と資料収集)Nari Gursahani Law CollegeのChandiramani学長から家族法の聞き取り調査を行った。9月18日~20日にはデリーのNational Law Universityにおいて資料収集を行った。また、9月、12月および平成29年3月にシンガポール大学を訪問し、南アジアを含むアジアの家族法に関する法律情報を収集すると共に、同大学およびSOASのMenski名誉教授を通じてPrakash Shah教授(Queen Mary University, UK)と交流し情報交換をした。 (2) 親権および監護権法に関する調査 9月のシンガポール訪問時にLeong Wai Kum教授およびWing Cheong Chan准教授と面談し、家族法・子ども法に関する情報交換と共同研究の打ち合わせをした。その後、Chan准教授との共同研究をさらに進め、平成29年2月4,5日に名古屋大学で離婚後の親権・監護権に関する国際シンポジウムを開催し、Chan准教授の他、Mogana Subramaniam准教授(マレーシア・マラヤ大学)、Euis Nurlaewati准教授(インドネシア・イスラミック大学)と日本人報告者2名(小川富之・福岡大学教授、立石直子岐阜大学准教授)を招聘し、2日間の会議を開催した。現在、会議成果物の公表準備中である。また3月20日~24日にはフィリピンを訪問しEmirio Enginco学部長(ラサール・リパ大学)、Elizabeth Aguiling-Pangalangan教授(フィリピン大学ディリマン校)と面談し情報交換した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の計画対象であった南アジアの親子法に関する調査および外国人専門家との共同研究を遂行し、従来のネットワークも拡大した。同時に、平成29年度の対象であった東南アジアのシンガポールおよびマレーシアの専門家を招聘して、国際会議を開催し、研究計画を前倒しして一定の成果をあげている。国際会議は相当な趣旨説明と打合せを行ったため、従来日本で明確に示されてこなかった日本法上の親権・監護概念との異同が明確に示された。会議成果物は平成29年中の公表準備段階にある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、次の三点につき研究を遂行する予定である。 (1)引き続き対象国の親権・監護権に関する調査を行い、平成29年度はインドおよびバングラデシュに加えてスリランカも対象とする。すなわち、平成28年度の国際会議の招聘対象であったインドネシアは旧オランダ植民地の大陸法系であるがイスラームの影響が非常に強い。三国を対象とすることで、アジアのイスラームの影響を示すと共に英米法系と大陸法系の東南アジア諸国の状況を示すことができた。同様に、南アジアにおけるスリランカも、旧オランダ植民地であり、後にイギリスの植民地となり、同時にイスラームの影響もあり、東南アジアと同様にイスラームと法系の差異を含めた参照をすることができる。スリランカについては、コロンボ大学のSharya Scharenguivel教授とすでにコンタクトをとり、準備を進めている。 (2)離婚後の親権・監護権の観点で対象国の情報をまとめ、成果物の公表を始める。並行して、共同研究を開始したフィリピンの専門家と更に共同研究を進め、フィリピンの親権・監護権を中心とした家族法・子ども法につき研究を進める。 (3)すでに一定の成果物を出している東南アジアの共同研究者と、次の家族法共同研究開始準備に入る。本研究は、親権・監護法制を皮切りとして伝統的な家族形態で保護しきれない家族崩壊や虐待からの子(弱者)の保護法制を比較検討することをテーマとしており、里親制度、養子縁組制度等を順次採り上げる予定である。
|
備考 |
2016年3月に開催した国際会議「アジアにおける同性婚に対する法的対応」の会議の報告ペーパー。企画運営と「インド」および「アジア諸国における同性婚の法的対応に対するイスラームの影響」につき分担報告とコメント。
|