研究課題/領域番号 |
16K03265
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
苑田 亜矢 熊本大学, 法学部, 教授 (80325539)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 基礎法学 / イングランド法制史 / アングロ・サクソン法 / コモン・ロー / 12世紀 / 法典 / 法集成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、成立期コモン・ローの特質を、コモン・ロー的要素のみならず、同時期のアングロ・サクソン法的要素や教会法的要素を含む三つの法的要素の複合的産物として、再考することにある。この目的を達成するための手がかりとしたいのは、何故に、アングロ・サクソン法集成が、コモン・ローの成立期たる12世紀に盛んに編纂ないし筆写されたのかという点の解明である。この目的を果たすため、今年度に実施した研究の成果は、以下の通りである。 まず、P・ウォーモルドやB・オブライアン等の研究を中心に、研究史を整理した。 次に、アングロ・サクソン法集成の写本の残存状況について、13世紀初めまでの時代に由来する写本の情報(内容の概要、作成地、作成年代、サイズ等)を調査・整理し、12世紀の重要性を明確化することができた。 また、この調査・整理にあたっては、英国のレスター大学とリーズ大学によるhttp://www.le.ac.uk/ee/em1060to1220/index.htmlや、ロンドン大学Institute of Historical Researchとロンドン大学キングスカレッジDepartment of Digital Humanitiesによるhttp://www.earlyenglishlaws.ac.ukを利用することができた。さらに、ロンドンの英国図書館に収録されている写本については、英国に出張し、現物を閲覧・調査することができた。 最後に、今年度中に調査・整理することができた研究成果の一部を、苑田亜矢「ノルマン征服から13世紀初めまでのアングロ・サクソン諸法集―手書本の伝来状況に着目して―」『法政研究』第83巻第 3号、659-696頁(2016年)として公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の調査に本格的に入る前に、ある程度の準備を整えることが出来ていたためだと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度の計画のうち終了させることができなかった部分について継続して取り組むと共に、アングロ・サクソン法集成の内容の分析を行なう。分析においては、訴訟手続や証拠方法に着目する。とりわけ、初期中世以来ずっと用いられていた神判、雪冤宣誓、決闘といった「超自然に訴える証明方法」の記述に注意する。なお、主要なアングロ・サクソン法典については、我が国に日本語訳の成果があるので、必要に応じてこれも参照する。 さらに、12世紀の国王裁判所や教会裁判所の実務におけるアングロ・サクソン法集成の利用状況の解明にも着手する。その場合、国王裁判所や教会裁判所における神判、雪冤宣誓、決闘、証人、そして証書を用いた証明方法の利用状況に着目する。国王裁判所や教会裁判所の実務については、12世紀にあっては、いずれの裁判所にも訴訟記録を保管する体制がなかったため、年代記やカーチュラリー等の中から裁判実務史料を拾い集めて分析を行なう。その際、年代記やカーチュラリー等から裁判実務史料を収集したEnglish Lawsuits from William I to Richard I, (Selden Society, vol.106-107)や、English Episcopal Acta (British Academy)も利用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震の影響により、当初予定していた期間での国外(英国)調査が実施できず、短期間での調査となったため。スケジュール調整を何度も試みたが、結果として、英国での調査期間を十分に確保することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、国外(英国)での十分な調査期間を確保し、昨年度中に実施できなかった写本(現物)の調査を行なうとともに、それらのデータの入手を行いたい。
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