研究課題/領域番号 |
16K03266
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研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
森 謙二 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (90113282)
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研究分担者 |
竹内 康博 愛媛大学, 法文学部, 教授 (40281456)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 墓地埋葬法 / 埋蔵 / 収蔵 / 火葬 / 埋葬義務 / 埋葬強制 / 祖先祭祀 / 死者の尊厳性への配慮 |
研究実績の概要 |
昭和23年施行の墓地埋葬法は、現状との間に大きなズレを示すようになっただけではなく、新しい葬法の展開によって墓地埋葬法の枠組みの空洞化も始まっている。本研究の目的は、その様な現実に対して、新たに墓地埋葬法の再構築に向けて、法律上どのような問題があり、どのような課題があるのかを探ることである。 2016年度の研究において、(1)墓地使用権のあり方について、(2)無許可墓地に対する対応について検討した。 (1)については、墓地の使用が行政当局の許可に基づいて行われるのにもかかわらず、①民法上の墓地使用権が所有権に基づく権利と構成されることへの疑問、②使用権が所有権に基づく権利であれば、使用権の行使としての「埋葬」になぜ許可が必要になるのか、③無許可墓地が一向になくならないのは墓地使用権の位置づけ方に問題があるのではないか、という議論が展開された。 (2)については、現実には無許可墓地が広範に存在し、その無許可墓地への「埋葬」が広く行われている現状についての議論である。ただ、違法であるからその摘発をすべきだということではなく、違法墓地をどのようになくしていくかという観点から、墓地埋葬法附則26条の「見なし墓地」の条項を視野におきながら、この無許可墓地への対応策が検討された。この時の議論(それぞれの研究者の報告発言要旨)についてはいずれの機会に公表する予定である。 なお、これらの議論の過程で、墓地は地方公共団体によって供給されるべきとする戦前からの墓地政策の原則が、昭和21年の通達によって宗教法人などにも墓地の新設が認められるようになるが、この通達の背景にはGHQの政策が大きな影響を与えたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年2回の研究会を確実に行っている。第1回目は墓地使用権について9名の研究者が、第2回目について8名の研究者と2人の市町村の墓地担当者の出席を依頼して研究会を開催し、議論を交わした。2016年度には年2回の研究会とともに、寺院を対象とした意識調査を実施する予定であった。ただ、テープ起こしや旅費などの関係でどれだけに費用が必要か、その予定で立たることが出来なかったこと、研究代表者が病気入院をしたこともあり、必要経費を考えてあわせて、意識調査のアンケートの数を減らすことにして、2017年度に市町村を対象とした調査と一緒に実施することにした。 第1回の研究会は録音テープが十分ではなく、現在のところ議論を公表するに至っていないが、第2回の研究会について研究会メンバーの了解を得て、何らかの形で公表していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、2回の研究会とアンケート調査を実施したい。2017度第3回(通算)の研究会は、新潟で「埋葬強制」「埋葬義務」をテーマとして行い、第4回の研究会は「信仰の自由と宗教法人の墓地経営」について議論ができたらと考えている。同じように、それぞれの専門分野の10人前後のメンバーで行う。 第3回(通算)研究会では、「埋葬強制」「埋葬義務」をテーマとする。これらは、ヨーロッパ社会の中で展開した概念であり墓地埋葬法の中心をなす概念である。公衆衛生・国民の宗教感情の観点から「死者は埋葬されなければならない」ことは普遍的な事柄であるが、このことを踏まえて、「誰が」・「誰の費用で」・「どこに」・「どのような方法」で行うかを議論したものであり、この議論がこれからの墓地埋葬法の再構築に向けてきわめて重要な議論になると考えている。 アンケート調査は、10月から12月の間に宗教法人市町村の担当者の対して、全体で対象を各500サンプル程度に限定をして行う予定である。このアンケート調査は研究分担者との共同作業で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
寺院に対してのアンケート調査を2016年度に行う予定であったが、市町村へのアンケート調査と一緒に2017年度に実施する。そのため、2016年度の予算からアンケート郵送費用及びアンケート返送費用、及びアンケートデータ入力費用を残し、2016年度から繰り越した。2016年度のテープ起こし、旅費の費用が予測不可能であったので、アンケート調査の費用を繰り越し、2017年度の市町村を対象としたアンケート調査のために費用を合算をして支出するため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年10月から12月に、寺院へのアンケートと市町村へのアンケート調査を同時に行う。調査方法は、郵送調査であり、寺院と市長村の調査対象をそれぞれ500程度のサンプルとして抽出する予定である。 主な項目としては、寺院に対しては、合葬式共同墓の運営方式を中心に、市町村においては現状の墓地行政で抱えるている課題について調査を行う。
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