研究課題/領域番号 |
16K03266
|
研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
森 謙二 茨城キリスト教大学, その他部局等, 研究員 (90113282)
|
研究分担者 |
竹内 康博 愛媛大学, 法文学部, 教授 (40281456)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 墓地埋葬法 / 埋葬 / 納骨堂 / 埋葬義務 / 埋葬強制 / 無縁改葬 / 祖先祭祀 / 死者の意思 |
研究実績の概要 |
昭和23年施行の墓地埋葬法は、現状との間に大きなズレを示すようになっただけではなく、新しい葬法の展開によって墓地埋葬法の空洞化も始まっている。本研究の目的は、その様な現実に対して、新墓地埋葬法の再構築に向けて、法律上どのような課題と問題があるのかを探ることである。 2017年度は2回の研究会を開催し、(1)「埋葬義務」「埋葬強制」について、(2)信教の自由と墓地埋葬法の問題について検討した。 (1)「埋葬義務」「埋葬強制」の論点としては、次の通りである。現在民法897条に代表される祖先祭祀の機能が低下しているので、それに代わる理念として「人は埋葬されなければならない」という倫理的義務を基礎付けた上で、法律は「埋葬」について、①誰に埋葬義務があるか(埋葬義務者)、②誰が埋葬方法を決定するか(埋葬方法決定者)、③誰が埋葬費用を負担すべきか(埋葬費用負担者)に区分して議論すべきであるとした。この「埋葬義務」「埋葬強制」は公法と民法の領域に関わる問題であり、現行民法のように祭祀承継者一人にこれらの義務を負わせるべきではないし、また「埋葬義務」を担う人々は一人ではないこと、また「埋葬」と「祭祀」は別のレベルの問題であり、区別すべきであるとした。 (2)「信教の自由」の問題は、ヨーロッパでは政教分離との関わりで議論されることである。本研究会では比較法史の観点から検討し、ヨーロッパでは19世紀後半以降に信教の自由の下で異教徒の「埋葬」方法である火葬の受容をしたこと、すなわちフランスにおいては1887年の「葬送自由法」、ドイツでは1934年の「火葬法」の成立を通じて、葬法の選択は「死者の意思」に委ねるという原則が確立した。日本でも「異教徒の埋葬拒否」の禁止は論理は引き継がれたが、「死者の意思」については20世紀末になってようやく「葬送の自由」として議論されるようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究会の開催は概ね順調に進んでおり、研究会でのテープ起こしなども順調に進み、最終年度にはホームページ(HP)上で、研究会での議論を公開できる予定である。 アンケート調査については時間を要している。アンケートの質問文の作成は終了しているが、アンケートの対象である寺院・市町村の特定、また住所等のデータの入力に時間を要している。寺院についてはその数も多いので、どのような属性を持つ寺院を対象とするかについて検討を重ね、合葬式共同墓(墓地)などの新しい葬法に積極的に取り組んでいる寺院を対象とすることにした。市町村については人口10万人以上に限定して,調査対象を特定する方向で進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
アンケート対象とする寺院は合葬式共同化墓(墓地)等を経営するものに限定し、市町村については、人口10万人以上の市町村を対象とすることにした。寺院・市町村ともに2018年5月から6月に発送したい。アンケートの対象件数は合計で1,200通を超える予定であり、返信のために料金受取人払いの手続きの申請中である。 また、研究会は、8月30日・31日に「刑法と墓地埋葬法について」を岩手県一関市の知勝院で行うことになっており、2019年2月には「まとめ」の研究会を実施する予定である。 最終報告書は、これまでの研究会における議論を中心にまとめ、アンケート調査についてはその結果についてホームページで公開する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査の費用を、2018年度に繰り越している。。
アンケート調査については、調査対象の特定及びデータ入力に手間取り、その結果市町村及び寺院へのアンケート調査を同時に行うことにした。アンケート用紙や封筒の印刷やアンケートの返送の「受取人払い」の手続きの複雑さを考えたとき、これらの調査を同時に行った方が費用などの節約に繋がると判断した。また、調査時期としても市町村においては4・5月は担当者の転勤などで時期としては好ましいとは言えないので、調査時期を2018年度5月以降にした方が良いと判断をした。、
|