研究課題/領域番号 |
16K03266
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研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
森 謙二 茨城キリスト教大学, その他部局等, 研究員 (90113282)
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研究分担者 |
竹内 康博 愛媛大学, 法文学部, 教授 (40281456)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 墓地埋葬法 / 墓地使用権 / 葬送の自由 / 死者の意思 / 死者の尊厳性 / 埋葬義務 / 新しい葬法 / 公衆衛生政策 |
研究実績の概要 |
1990年以降〈家〉を基礎した葬送(=葬儀と埋葬)のシステムが崩れはじめ、現行の墓地埋葬法(昭和23年施行)の空洞化が始まっている。 ヨーロッパでは、20世紀に至るまではキリスト教の伝統の中で葬送のシステムが実行されていたが、自由主義者の台頭とともに火葬が主張されるようになり、葬送のシステムがキリスト教の伝統に基づくものから「死者の意思」を重視する枠組みへと変化していった。日本でも、20世紀末になって少子化の影響により、〈家〉の存続が困難になり、祖先祭祀の伝統が揺らぎ始めてきた。これまでの〈家〉によって遺骨を保存・承継していく伝統が維持できなくなったとき、これまで墓地埋葬法が前提としていたシステムが空洞化していくことになる。 20世紀末になると我国でも「葬送の自由」が主張され始めた。たしかに新しい葬法も主張されたものの、それは「死者の意思」を重視する葬法の主張ではなく、〈家〉の伝統を引きずったアトツギの意思を重要視するものであり、結果的には「死者の尊厳性」を脅かすような遺骨処理が見られるようになった。このような現象に墓地埋葬法は対応することができず、21世紀になって墓地埋葬法の空洞化は一段とする進むことになった。 空洞化した墓地埋葬法の再構築が私達の研究の目的である。この墓地埋葬法の問題点を明確化するために、(1)私法・公法分野の研究者を含めた研究会の開催、(2)市町村の墓地行政担当者へのアンケート調査等を実施した。その結果、①現行の公衆衛生政策を主眼とした墓地埋葬法では十分ではなく、②新墓地埋葬法を再構築していくためには、「死者の尊厳性」を踏まえた「埋葬義務」の原則を導入することを中心に、③「埋葬」の概念を明確にすること、④墓地使用権の概念の明確化すること等、⑤墓地埋葬についての国民の権利・義務を明確にした墓地埋葬法の秩序を再構築することを提言した。
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