研究課題/領域番号 |
16K03268
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松尾 弘 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (50229431)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インドシナ / 民法 / 開発法学 / 法整備支援 / インクルーシブ / ラオス |
研究実績の概要 |
ラオスにおける民法の整備状況を分析した。特に1990年以降の一連の実質的民法の整備,とりわけ,所有権法,契約内債務法・契約外債務法(2008年に契約内外債務法として統合),担保取引法,家族法,相続法,土地法を中心に,民法関連法令の整備について,その実質的内容に立ち入り,ラオス的な特色を確認し,かつその裁判や取引実務における実施状況を分析した。加えて,現在編纂作業中の民法典草案の特色とその審議状況についても検討を加え,現行法に対して実務的にどのような要望が出されているか,それに対してどのような対応が検討されているかを確認した。これら民法関連法令について法令資料(英訳,和訳を含む)を分析した。また,ヴィエンチャン,ルアンパバン,サワナケート等における村落行政事務所,土地登記所,地方裁判所,法律事務所,不動産取引業者,銀行,地元のNGO等において法令実施状況の調査,頻繁に生じる類型の紛争とその解決方法について,自らの調査に加え,既存の調査報告も用いて,分析した。その際には,ヴィエンチャンにおける司法省および法整備支援プロジェクト・オフィスにおいて,民法関連法令の適用上の問題について,インタビュー調査を行った。他方で,世界銀行,世界正義プロジェクト,司法省等が提供する法の支配指標,司法アクセス状況等に関するデータの経年変化の分析,世界銀行,IMF,政府統計局等が提供するGDP(名目,実質)・成長率・1人当たりGDP(名目,実質)の推移,産業構造の変化,外国投資,輸出入の内容の変化等の経済的指標の変化,世界銀行,フリーダムハウス等による集会・結社・表現の自由,政府の説明責任,政治的安定性,政府の効率性等の政治的指標の経年変化に関するデータを分析した。さらに,現在起草中のラオス民法典草案の内容を確認し,これに対する世界銀行のコメントとその当否についても検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査,文献調査ともに,ほぼ計画どおりに研究を進めた。 加えて,ラオス民法典の最新草案を入手し,その逐条の分析,それに対する国会議員からの質問・コメント,それに対するラオス政府の回答準備状況等も含め,情報を収集し,分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って研究を進める。次年度はカンボジアに焦点を当て,特に2007年民法典,2011年民法適用法,1999年土地法,2001年土地法等を中心に,民法関連法令の整備について,その実質的内容に立ち入り,特色を確認し,かつその実施状況を分析する。また,現在準備中の担保取引法草案,商事契約法案の特色とその審議状況についても検討を加え,現行法に対して実務的にどのような要望が出ているかを確認する。こうした民法関連法令については,法令資料(英訳,和訳を含む)を分析するほか,プノンペン等における行政事務所の戸籍担当部局,登記所,地方裁判所,法律事務所,不動産取引業者,銀行,弁護士会,地元NGO等において法令実施状況の調査,民事裁判例の動向,頻繁に生じる紛争類型とそれらの解決方法についての具体的分析等を行う。その際,プノンペンにおける司法省および法整備支援プロジェクト・オフィスにおいて,民法関連法令の普及および適用上の問題について,インタビュー調査,その他の実地調査を行う。その一方で,世界銀行,世界正義プロジェクト,司法省等が提供する法の支配指標,司法統計,司法アクセス等に関するデータの経年変化の分析,世界銀行,IMF,財務省,商業省等が提供するGDP(名目,実質)成長率・1人当たりGDP(名目,実質)の推移,産業構造の変化,外国投資,金融,輸出入の内容の変化等の経済的指標の推移,世界銀行,フリーダムハウス等が提供する民主化・政府の説明責任等の政治的指標の経年変化に関するデータも収集・分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は発注した図書のうち,執行期限までに入手できなかったものがあり,未執行額が発生した。 その後,これらの図書はすでに入手しており,これらも活用しながら,次年度は研究計画当初の支出計画に従って研究を進める。
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