研究実績の概要 |
各論研究として、妻財産をめぐる財産管理という観点から、これまであまり注目されてこなかった嫁資外財産の処分・管理に注目してきた。前年には、これに関わるスカエウォラの21 dig. D.35,2,95を取り上げて、国際古代法学会(LXXIIIe Session De La Societe Internationale Fernand De Visscher Pour L’histoire Des Droits De L’antiquite (SHIDA) 2019 Edinburgh, UK)で報告したので、その報告をもとに当該スカエウォラ法文についての論文を作成した。しかし、校正の過程で、問題の核心にかかわる認識不足のあったことが分かり、書き直しのため、法文を再度検討しなおした。その結果、日本民法の遺贈減殺請求の場合の計算方法の問題にもつながる緻密な論点がこのスカエウォラ法文に簡潔に提示されていることがわかった。現行法において、遺留分の算定には、民1029条に基づき相続債務を控除しなければならないが、その基礎財産の算定方法には争いのあったところである。平成8年の最高裁判例がリーディング・ケースになっているが、本ローマ法文は、そうした一般理論と判断のプロトタイプを示すものである。ローマ法は現行法の源流であるが、現行法に優る緻密な構成に加え、どのような問題意識でこうした法理が生み出されたのかが、本法文から明確になったことは大きな成果である。この再検討の結果を論文に作成したが、新型コロナの影響で十分時間が確保できず、完成に至らなかった(校正中)。 また、世界的なパンデミックで、国際学会がすべて延期となったため、予定していた報告はできなかった。
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