研究課題/領域番号 |
16K03282
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
渡辺 智之 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 教授 (80313443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 消費税 / VAT/GST / インボイス |
研究実績の概要 |
28年度(初年度)においては、研究計画に従い、基礎的な論点の整理に重点を置くとともに、海外出張を通して、国際的な研究ネットワークの拡充に努めた。 まず、VATの基本的な性格を経済学的な視点から検討した論考(「経済活動と消費税」)を税務関係の専門誌で公表するとともに、その後、EUの研究者によって検討が進められている非伝統的なVAT(一般的リバースチャージ方式や事業者間取引にゼロ税率を適用する方式)に関する研究を進め、VATの仕組みの基礎についてさらに理解を深めるための努力を続けた。特に、情報技術の進展とインボイス制度の位置づけとの関連について考察を行った。その基礎的研究の成果については、29年度中に税務関係の専門誌上で公表することを予定している。この他、平成28年10月の日本財政学会においても、「付加価値税システム:再考」と題する研究報告を行った。 また、平成28年8月にマドリッドで開催されたIFA(国際租税協会)の年次総会に出席し、EU諸国を含む各国の研究者・実務家との情報交換を行った。さらに、平成29年2月には、香港に出張し、香港大学・香港中文大学の研究者と意見交換を行うとともに、香港中文大学で、国際サービス取引に対するVATの適用を、基礎的な理論と日本の税制改正の観点から概観する講演を行った。 なお、日本の消費税の最新動向を英文で紹介するIBFD(International Bureau of Fiscal Documentation)のVAT Worldwideについては、年2回の改訂作業を行った。 29年度以降については、28年度に達成した基礎的な成果をもとに、アジア太平洋地域のVAT/GSTシステムの本格的な比較作業に入っていくこととしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間の初年度において、基礎的検討を固めることと研究者間の国際的ネットワークを拡充すること、という当初の目的は28年度中に十分達成できたので、研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。特に、EUのVATにおける新たな動きについて検討を進めることができたことは収穫であった。 他方、BEPS等をめぐる国際課税の動向の変化が速く、それにキャッチアップするための調査活動に労力を注いだこともあって、アジア太平洋地域のVAT/GSTシステム比較のための、各国の制度の具体的な比較研究については十分な時間が取れなかった。この点は、2年目3年目において、作業を加速していくつもりである。ニュージーランド・シンガポールの研究者との連携も引き続き進めたが、基本的にメールベースの連絡であった。
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今後の研究の推進方策 |
28年度においては、ニュージーランドとシンガポールへの出張を行うことができなかったが、29年度においては、アジア太平洋市域のVAT/GSTシステム比較研究を進展させるべく、ニュージーランド等の研究者との会合を持ち、具体的な比較研究作業を行っていきたい。また、日本の消費税の特質に関する地道な研究も続けることで、他国のVAT/GSTシステムとの比較作業の深度を一層向上させるよう努めたい。さらに、中国・韓国のVATにおける最新の動向についての把握により注力したいと考えている。
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