欧米の主要民主主義国では民意の大きなゆらぎ、エリートや政治制度への不信の表明などが共通した現象となり、日本では首相・内閣への過度の権力集中がみられる。こうした中、選挙・権力の信任という側面と同時に、それに対する制度的非制度的回路を通じた様々な対抗という側面に着目し、日本並びに欧米(とくにフランス)を素材に、両者の相互作用という視点から民主主義の実質を形成するための基礎理論の構築を目指すことが、本研究の目的である。 4年目にあたる令和1年度は、平成30年度に引き続き、議会制度、選挙のほか、政党、参加民主主義、デモなど、代表民主政の実質に関わる諸問題について検討を進め、またこれまでの研究成果の公刊を行った。日本国内の問題については、只野雅人・松田浩編『現代憲法入門』(法律文化社、2019年5月)18-31頁・50-75頁、木下智史・只野雅人編『新・コンメンタール憲法〔第2版〕』(日本評論社、2019年6月)1-4頁・432-611頁・686-724頁、を公刊し、既刊の憲法解釈にこれまでの成果を反映するともに、「1989年参院選・政治改革と憲法政治のいま-30年後の参議院選挙を前に-」税経新報676号(2019年5月)4-12頁、「参議院改革と政治会改革25年」憲法研究5号(2019年11月)35-47頁において、近時の制度改革の経緯をふまえた検討を行った。またフランスについては、「政治制度と代表制-近時のフランスでの制度改革論をめぐって」山元一・只野雅人・蟻川恒正・中林暁生編『憲法の普遍性と歴史性』(日本評論社、2019年8月)601-623頁、「民主主義と透明性―公的生活の道徳化をめぐるフランスの近時の立法を素材として-」法学83巻3号(2020年1月)76-100頁を公刊し、近時の制度改革やそれらをめぐる理論動向を素材としつつ、信任と対抗をめぐる理論的な検討を行った。
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