研究課題/領域番号 |
16K03285
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山崎 友也 金沢大学, 法学系, 准教授 (80401793)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遡及処罰禁止原則 / 法的安定性 / 憲法保障 / 国家緊急権 / 抵抗権 / 憲法の最高法規性 |
研究実績の概要 |
今年度前半は,公訴時効廃止の遡及適用を認めた刑法及び刑事訴訟法上の経過措置規定の合憲性を検討する機会を得た。最高裁は,同規定を,被告人の行為時点の違法性の評価や責任の重さを遡って変更するものではなく,また,公訴時効の完成していない被疑者・被告人に限って遡及する規定である以上,その法律上の地位を著しく変更するものではないとして,憲法31条・39条・各条の趣旨のいずれにも反しないと判断した。しかし,同規定は,公訴時効の完成していない被疑者・被告人の予測可能性を制限する以上,その法律上の地位の「著しい」変更に該当しうるものであり,法律上の公訴時効の完成が何故憲法上の遡及適用禁止原則の保障を排除できるのかより立ち入った説明が必要であった。 今年度後半は,上記刑事手続上の原則を含む憲法保障のあり方にやや原理的な検討を加えた。憲法保障制度は,決して憲法の実現を自動的に保証するものではなく,常に有権解釈が「正しい解釈」といえるか不断の検証を必要とする点で,憲法の最高法規性と緊張関係に立ちうる。「予防的憲法保障」の典型とされる国家緊急権・抵抗権は,それぞれ再構成が必要である。前者については,権力分立や基本権の停止に至らない緊急事態対応を含まないものと観念すべきである一方,立憲的意味の憲法秩序ないしその根本規範保全のためと称する国家緊急権概念は同憲法秩序の破壊そのものであって採りえない。後者については,通常の自由権規定とは別個の概念として観念すべきではなく,通常の自由権に対する重大明白な侵害の排除を請求する権利と解しうる点で,少なくとも実定法上の抵抗権なるものを独立して観念する意義は乏しい旨指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度前半は,交付申請書「平成29年度の計画」に記載した通り,違憲審査制と国民主権原理の反映する諸立法との関係をある程度整理することができた。記載した英・米・独における国民主権原理(民主政原理)と憲法秩序の保障との緊張関係に関する諸学説の整理分析もかなり進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
28年度・29年度でおこなった日・英・米・独における国民主権原理(民主政原理)と陪審(参審)との関係理解を改めて整理する。そのうえで研究成果を主に北陸公法判例研究会で披露し出席者との意見交換により修正し,本研究を総括する論考を紀要等で順次公刊していく。単著となる論文集の発刊を30年度中に予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定した書籍の購入取りやめ。次年度の物品費として使用を予定。
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