今年度は,「行政不服審査裁決・答申検索データベース」に掲載された答申,裁決を素材に,(a)不当性審査,(b)認容裁決の際の措置,(c)行政不服審査会等への諮問の要否を中心に,運用上の問題点を抽出する作業を進めた。また,国・地方公共団体の行政不服審査制度の運用に関わる関係者(審査会委員,審理員,事務局等)が一堂に会して運用上の課題等について議論する会合(第2回行政不服審査交流会)において分科会のコーディネーターを努める機会を得て,参加者との意見交換を通じて,争点整理手続,弁明書・反論書の提出期限の設定等,審理手続の終結等,証拠書類の閲覧請求と審理員の職権による送付,事実認定における証拠による裏付け等,審理員制度の運用において実際に生じている運用上の課題を認識,整理することができた。 比較法研究について,ドイツ法,オーストリア法双方について,出張等を通じて収集した資料に分析を加える作業を継続した。特に,オーストリア法について,論点ごとの検討の前提となる,権利救済制度の全体像を明らかにするための検討を加えた。 当初の実施計画に盛り込んでいた事項以外に,本研究課題に関連して,昨年度に引き続き,裁定的関与の問題について,そのリーディングケースとされる事例(大阪市国保事件)とその現代的意義について詳細に検討を加えた。また,審理手続における職権探知主義について,判例解説を通じて,改正法の下での妥当性や運用上の留意点について検討を加えた。
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