研究課題
基盤研究(C)
イギリス憲法学において、二つの議院内閣制の理解がある。まず、行政権の中心を内閣総理大臣と考え、国会議員の選挙を「政権選択」選挙と考える立場である。もう一つは、行政権の中心を内閣と考え、内閣が国会に対して責任を負うという大臣責任制を中核に議院内閣制を構想する立場である。90年代日本の統治構造の変革は、前者の考えを前提としていた。本研究は、現状の「一強」の政党状況が、この改革の失敗に起因しているとの認識に立ち、後者の議院内閣制のモデルの重要性を明らかにしようとするものである。
公法学
憲法学においては、内閣が国会に責任を負うことに議院内閣制の本質をみる見解が多いが、それにも拘わらず、与党が党所属の国会議員を支配することによって、内閣が国会に優位する現象を暗黙の前提としてきたように思われる。しかし、イギリスにおいては、国会議員が与党から相対的に独立する傾向が強まっており、その結果、国会による内閣の統制は、なお実効的に機能している。このようなイギリスの議院内閣制のあり方は、「一強」政治に陥り、権力統制の機能を失いつつある日本の国会にとって、非常に参考になると思われる。