研究課題/領域番号 |
16K03289
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
曽我部 真裕 京都大学, 法学研究科, 教授 (80362549)
|
研究分担者 |
井上 武史 九州大学, 法学研究院, 准教授 (40432405)
堀口 悟郎 九州産業大学, 経済学部, 講師 (40755807)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 公共放送 / 政党 / フランス憲法 / 大学制度 |
研究実績の概要 |
曽我部は、研究全体の取りまとめを行うとともに、分担テーマである「基本的情報の 提供・流通の体制のうち公共放送のあり方」について考察を行った(「『実名報道』原則の再構築に向けて 『論拠』と報道被害への対応を明確に」Journalism317号(2016年)83-90頁)。 井上は、分担テーマである「民主政に関与するアクターの規律」について、国家と市民社会を媒介する重要なアクターであり、民主的な意思決定に大きな影響を及ぼす政党に着目して、その憲法上の位置づけや規律のあり方の検討を進めた。その際、比較の対象として政党条項をもつフランス憲法・政党法制を取り上げて、①実体的ルールの側面と、②そのルールを確保する制度的な側面の2つに分けて考察する方法を採用しつつ、平成28年度は主として②について、政党や政党法制に関して裁判的統制を行う2つの機関である憲法院とコンセイユ・デタの組織および権限の内容を明らかにした(井上武史「フランスにおける合憲性統制機関――憲法院とコンセイユ・デタ」川崎政司・大沢秀介『現代統治構造の動態と展望――法形成をめぐる政治と法』、尚学社、2016年)。 堀口は、分担テーマである「専門的知識を創出・供出する制度」として、学術の中心をなす機関である大学に着目し、統治プロセスにおける大学の位置づけなどについて考察を進めた。その結果、フランスの大学教員は、国家公務員という身分を有することにより、いわば統治機構の中に組み込まれており、そのことが大学教員に特別の義務を課すと同時に一種の特権を与えていることが明らかになった。このような法的構造は、戦前における日本の各帝国大学にもみられるものであることから、日仏比較の準備作業として、まずその点について研究成果を発表した(堀口悟郎「学問と統治」片桐直人=岡田順太=松尾陽『憲法のこれから』(日本評論社、2017年刊行予定))。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究に着手し、研究成果の公表にもこぎ着けている。研究者同士のコミュニケーションも良好である。ただし、外部研究者を招聘しての研究会が開催できていないため、次年度は実現に努めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
曽我部は、引き続き全体の取りまとめを担いつつ、「基本的情報の提供・流通の体制のうち公共放送のあり方」のテーマについて取り組みつつ、「補完的に民意を表明・調達する手法」、とりわけデモ等の法規制のあり方について考察を広げる。 井上は、「民主政に関与するアクターの規律」という分担テーマに関して、引き続きフランスの政党法制を中心に検討を進める予定である。折しも、2017年度前半にフランスでは大統領選挙が予定されており、政党での予備選挙を含めて様々な動きが見られることから、フランス政党法制の適用状況や問題点を参照しつつ、比較法的な検討を進めていきたいと考えている。 堀口は、大学制度に関する研究を継続し、大学における研究活動の規律や、必ずしも学問の専門家とはいえない構成員(実務家教員や学生など)の大学への参加に関する問題などについて、検討する予定である。また、統治プロセスにおいて市民の知識を活用する諸制度についても、あわせて検討を進めたい。 なお、今年度は上記の課題に関連して、現地を訪問しての調査も検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
外部研究者を招聘しての研究会を開催する予定であったが、対象者の選定や日程調整等の問題で今年度は実現できなかったことが主な理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
29年度は研究会を開催し、それに充てる予定である。
|