今後の研究の推進方策 |
グローバル化の中で、日本における難民認定申請者は増加し続け、平成26年は5,000名となっていたが、平成27年は7,586名、平成28年は10,901名で、昭和57年に難民制度が創設されて以来、過去最多を更新し続けている。不服申立数も、平成26年は2,533名、平成27年は3,120名、平成28年は5,197名と増加を続けている。本研究では、難民として認定されなかった者の退去強制につき欧州の現状を考察し、日本に紹介することを主眼においている。したがって、欧州人権裁判所及び欧州司法裁判所の関連判決の調査研究と共に、争点を細分化し分析を継続する。また、判決のみならず、逆風が吹く中での人権保護、多文化共生の様々な取り組みから非常に学ぶことも多い。こうした、人権の促進、とりわけ、難民認定申請者を含めた移民政策について今後も継続的に調査研究を進めることが、日本の今後の在り方に寄与すると思われるため、フランス・ストラスブールの欧州評議会及び欧州人権裁判所を拠点として調査研究する。必要に応じてスタッフ、NGO、市民社会等から意見を聴取する。さらに、欧州の加盟国が加盟している国連が平成28年9月に初の難民・移民サミット「難民・移民ニューヨーク宣言」を採択した点も留意する必要があるであろう。その背景として、国連が創設されて以来、最大の難民・移民危機に対し、従来の移民と難民の住み分けを維持することが困難となってきたことは看過できない。同宣言の内容は多岐に渡るが、難民と移民を区別することなく同列で議論する点が特徴的である。例えば、「地位に関係なく、すべての難民と移民の人権を保護する。」、「難民と移民の子どもたちが全員・・・教育を受けられるようにする。」、「大量の難民と移民を救出している国や受入国を支援する。」、「難民や移民の排斥を禁止」等であるため、この視点も今後の研究の重要な柱としていく。
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