本研究は、外国人が関与するテロリズムに対して欧州連合(EU)の基本諸条約と出入国管理に関する法令(EU移民法)がどのように対処しているかについて、最終年度として以下のような研究調査を実施し比較法的な理論構築のための成果を上げることが出来た。 第一に、欧州連合(EU)と日米の比較法研究の理論的総括をおこなうための文献資料を収集・整備し、多方向からの分析に資するための準備が出来た。 第二に、外国人テロリストとEU移民法に関する事柄について学術調査を実施し、情報の収集とともに現地の関係者との意見交換をすることが出来た。まずオランダにおいて、ライデン大学移民法研究センターの関係者らとテロ・難民に関するEU移民法の現行の運用状況について、最新情報・資料の収集と意見交換を実施した。ドイツにおいては、フランクフルト・ゲーテ大学法学部の関係者と日・独の比較法の観点からの情報・意見交換を行うとともに、今年度は出入国管理実務に精通する弁護士らとの共同研究を実施した。それとともにイランとドイツの二重国籍者による2016年ミュンヘン銃撃事件の現地調査を実施することが出来た。チェコにおいては、在来研究の折に勤務校へ招請し共同研究の機会を得たプラハ・カレル大学の関係者および欧州連合(EU)の政府関係者らから喫緊の状況についての情報収集を行いテロ・難民の事案に関する現況を分析することが出来た。 第三に、上述の最終年度の研究実績を踏まえた本研究の成果の一部を、「テロ・難民に関する欧州連合(EU)の基本諸条約およびEU移民法の枠組みと『移動の自由』」というテーマで、本務校の紀要(香川法学第40巻1・2号、2020年度9月刊行予定)に掲載し、公表されることが決定された。 以上のように、最終年度としてこれまでの研究調査に加えて本研究全体を総括し、公表することになり一定の研究成果が上げられたものと考えている。
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