研究課題/領域番号 |
16K03296
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤坂 幸一 九州大学, 法学研究院, 准教授 (90362011)
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研究分担者 |
村西 良太 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (10452806)
上田 健介 近畿大学, 法務研究科, 教授 (60341046)
木下 和朗 岡山大学, 法務研究科, 教授 (80284727)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 議会 / 立法 / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本年は、研究計画に従い、グローバル化現象の下における新たな秩序形成プロセスの生成・発展と、その中での議会の新たな役割に焦点を当てた研究を行った。具体的には、1)医療関連ルールや金融規制、仲裁法制などの個別分野において、また、2)いわゆる動態的知識形成が必要となるリスク規制の分野一般について、さらに3)AIの発展に伴うアルゴリズム規制が問題となる領域一般について、従来の議会中心の秩序形成のあり方が限界を迎えていること、それゆえ、A)新たな秩序形成プロセスの正統性を民主制や専門性、透明性といった観点から以下に調達すべきかを検討すると同時に、他方で、B)従来の議会制定法律を中心とする秩序形成システムが効果的に機能する領域及び機能すべき領域を剔刔し、このような伝統領域を拡充するとともに、上記の新たな問題領域との接合・役割分担を明確にすべきことについて、比較法的な視点をも踏まえつつ、理論的な研究を行った。 本年度の研究を通じて、とりわけ、アルゴリズム規制の領域に関し、民間機関の策定するアルゴリズムに基づいて選別や判断が行われる結果、バーチャルスラムの問題や、アルゴリズムの自動学習プログラムを通じた規律内容の自律化(すなわち公的統制からの乖離)の問題が生じることが明らかになった。すなわち、規律の対象・必要性・結果について知悉した立法者が、十分な将来予測に基づいて法律を制定し、この法律に基づいて行政を行うという従来型の法律統御モデルに限界があることを示しており(何が適切なアルゴリズム化を議会自身が判断することは困難である)、民主制・透明性の要請が貫徹すべき公的領域と、非民主制・専門性を特質とする部分領域とをどのように結合すべきかが喫緊の課題となるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、グローバル化時代の議会立法および議会統制権の拡充のあり方について、先端的な理論的研究、および実務的観点からの実証的研究を行うことを主眼とするが、上記の研究実績の概要でも示したように、従来の憲法学・公法学で当然の前提とされてきた立法権理論(狭義には憲法41条の解釈論)には、現代の社会技術環境及びグローバル化現象を背景にした場合、・アルゴリズム統御、・動態的知識形成、・知識形成プロセスのネットワーク化等の観点から、根本的な再検討が必要であることが明らかにされた。このような研究動向は、ドイツやアメリカの先端的研究分野では部分的に議論されているものの、立法権理論の再編という観点からは未だ萌芽的な研究にとどまっており、わが国で初めて本格的・総合的な視座からこの主題の研究を展開することができ、当初の期待通りに、あるいはそれ以上に、理論研究の基盤を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、以上で得られた理論的知見を従来の伝統的な議会法理論の中に定礎するとともに、他の学際領域との間でどのような理論的発展を生み出しているかを検討する。加えて、仮想通貨や金融規制などの分野、あるいはリスク規制の分野で、実際にどのような形で秩序形成が行われているか、その実務的展開をも視野に入れた理論構築を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の秩序形成実務を検証し、これと対比する形で議会法理論及び秩序形成論の深化を図るべきところ、上記の研究業績に示した如く、理論的深化に傾注することの必要性が明らかになり、当該年度はまずこの作業を優先させたためである。そのため、次年度に研究会の開催及び実務検証を行う予定にしている。
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