過年度まで、憲法をいかに制度設計するのか、どのような制度設計であれば議会や執行府による憲法解釈が実際の憲法秩序に影響を与えるようになるのか、といった考察を行ったが、本年度もそれに引き続く研究として、法学教室での連載の中でそれに関するテーマを扱った(「どこまで国民は統治に関わるのか」、「どのような統治制度にするのか」、「憲法はどのような「危機」に直面しているのか」など) 次に、本研究は、政府の憲法解釈を裁判所が統制する可能性に関する基礎的な研究として、「統治構造において「違憲審査制」が果たすべき役割」を判例時報誌に公表した。 第三に、日本における「政府の憲法解釈」と議会との関係を論じる前提となる、憲法解釈に関する先例がどのように扱われているのか、そもそも何をもって「先例」と位置づけるのかなどといった論点について、「内閣と先例――憲法解釈を中心に」という学会報告を基にした論文を公法研究に公表した。 第四に、日本における憲法の「安定」の要因について多角的視点から分析し、その一端を政府の憲法解釈が担っていることなどを論じたConstitutional stability in japan not due to popular approvalをGerman Law Journal誌に掲載した。 以上の通り、憲法の規範力・規整力を担保するための統治構造のデザインや、憲法解釈をめぐり三権がどのような相互関係のもとで動いていくのかなど、多角的な方向から本テーマにアプローチすることができ、研究も進展した。
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