研究課題/領域番号 |
16K03303
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
徳永 貴志 和光大学, 経済経営学部, 准教授 (50546992)
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研究分担者 |
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40551495)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国民議会 / 反対会派 / 少数会派 / 欧州人権裁判所 / 内閣事務総局 |
研究実績の概要 |
まず、政府の憲法解釈の生成に大きな役割を果たしている国務院について比較法的視座を得るため、ヨーロッパ型国務院のあり方を検討した。その成果として、奥村公輔「ヨーロッパ人権条約6条1項の「独立の公平な裁判所による裁判を受ける権利」とヨーロッパにおける二重機能型国務院との関係についての基礎的考察」早稲田法学93巻3号(2018年)1-26頁、等を挙げることができる。また、平成28年度、フランスにおける政府の憲法解釈に関わる重要な機関である内閣事務総局及び国務院に対して聞き取り調査を行ったが、その成果を公表するために、音声記録の文字起こし、テキスト化した取材内容の取材対象者への確認、翻訳とその内容についての分析等を行った(平成30年度にインタビュー内容を全訳及び論説として公表する予定)。さらに、政府の憲法解釈と議会及び裁判所の憲法解釈との関係に関する実態を把握するため、憲法院(2017年9月11日)及び国民議会(2017年9月12日)への聞き取り調査を行った。その成果として、徳永貴志「フランス国民議会の特徴」『基本情報シリーズ25 フランス議会下院規則』(国立国会図書館調査及び立法考査局)(2018年)1-29頁、等を挙げることができる。加えて、本科研費の研究会として、以下の2つの研究会を実施した。 ①第1回(通算第2回)研究会(2017年12月8日):河嶋春菜「憲法院、コンセイユ・デタ訴訟部及び欧州人権裁判所における権利保護の相克」 ②第2回(通算第3回)研究会(2018年2月12日):奥村公輔「フランスにおける政府諸機関間の憲法解釈の相互作用―内閣事務総局の役割に着目して」、徳永貴志「フランスにおける政府と議会との憲法解釈の相互作用」、新井誠「フランスにおける政治部門と憲法院との憲法解釈の相互作用―アメリカの立法過程における連邦最高裁判決の理論的、時間的影響との比較を通じて―」。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、フランスの国務院及び首相府内にある内閣事務総局を直接取材することによって、フランス執行府内の諸機関がその相互関係の中で憲法解釈をどのように行っているかを調査し、ある程度明らかにすることができた。他方で、議会の憲法解釈の生成に関しては、フランス上下両院におけるシンポジウムへ参加し、複数の憲法学者に研究の方向性についてアドバイスを受けることができたものの、議会内の実務家への聞き取り調査を実施することができなかった。それに対して、平成29年度には、現憲法院判事で2010年から2016年まで国民議会事務総長を務めたCorinne LUQUIENS氏に加えて、その元部下で現国民議会法務部長のGeorges BERGOUGNOUS氏にも取材することができ、議会における憲法解釈の生成について貴重な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
フランスにおける政府の憲法解釈と他の国家機関の憲法解釈との関係と、日本における政府の憲法解釈と他の国家機関の憲法解釈との関係とを比較分析し、動態的に把握するため、フランスにおける固有の事情を明らかにするとともに、日本法への示唆を検討しなければならない。また、昨年度までの研究成果をまとめ、批判的に検証するために、研究代表者(徳永)及び研究分担者(奥村)がともに比較法学会で報告する。さらに、フランスにおける政府の憲法解釈の生成において重要な役割を果たしている大統領府及び司法省の実態を把握するために、これらの国家機関へのインタビュー調査を実施したい。加えて、フランスの実態を再分析・再検証するため、改めてフランスの憲法学者等の専門家に対するヒアリング調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)交通費支出が予定していたよりも少なかったため。 (使用計画)次年度購入予定の図書費及び交通費に充てる。
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