研究課題/領域番号 |
16K03305
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
首藤 重幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00135097)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 公物 / 公共施設 / 登記 / 土地収用法 / 不明裁決 / 法定外公共用物条例 |
研究実績の概要 |
第一に、これまでの自己の公物研究を総括する作業をおこなった。近時の自己の研究成果の整理と共に、「公共施設と登記」というテーマで全国でおこなってきた講演のさいに受けた多くの質問への回答をまとめるという意味をもって、早稲田法学で論稿「公物をめぐる近時の諸問題-公共施設の登記を中心として-」(92巻2号、2017年3月)を公表した。本論稿では、講演において語り尽くせない公物の「理論的問題」についても詳細に論じておいた。 第二に、土地収用法の不明裁決の検討をおこなった。行政が道路等の公共施設を整備するべく土地の買収をおこなうさい、所有者不明土地を取得するには様々な法的困難が生じる。現在、この問題は、特に被災地の復興のための公共施設の早急な整備に対して、大きな阻害要因として登場してきている。このような状況のもとで、所有者不明土地を収用する手法である土地収用法の「不明裁決」の制度の構造や訴訟での取扱いを検討した。そして、不明裁決の活性化のために国土交通省が不明裁決手続のガイドラインで示した調査の精度は、現在の実務で必要とされる調査の精度よりもかなり緩和されたものになっており、その点で問題が発生するのではないかと思われる。公共施設の設置のための不明裁決の活用と問題について、一定の研究成果をえることができたと考えている。 第三に、法定外公共用物管理条例の研究作業を開始することができた。法定外公共用物の譲与を受けた自治体が、地方自治法の定めのもとで、法定外公共用物の管理をめぐる条例を作成してきている。この条例の学問的検討は、いまだ部分的にしかおこなわれておらず、しかも、予想される紛争事例が視野に入っていないものになっている。これまでの公物をめぐる紛争事例を踏まえて、法定外公共用物条例の運用をめぐる問題の総合的検討が必要であり、関係条例の収集も含めて、この検討を開始することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に設定研究計画は、①未登記公共施設の法的紛争事例の検討、②自治体における公共施設の登記努力の実態の把握、③法定外公共用物の譲与をめぐる紛争、という3つをテーマとした。 ①の研究課題については、早稲田法学で公表した論稿のなかで、かなりの細部まで法的問題を論じることができたと考えている。ただし、所有者不明土地を行政が公共施設用地として取得する手法の一つである、その土地を認可地縁団体の所有として登記したのちに、行政が買い取るという方法につき、所有者不明土地を認可地縁団体の所有とするまでの法的過程につき、いまだ若干の検討不足が存在していることを認識している。 ②の課題については、収集した情報の量が増加してきている点で、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。 ③の課題については、最も確実な研究成果をえることができたと考えている。その研究成果の一部は早稲田法学で公表することができたし、さらに、研究会でも新たな視点での報告をおこなうことができた。そして、二線引畦畔の譲与をめぐって世田谷区で発生している事件に関係する大量の資料を入手することができ、その検討に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、法定外公共用物の譲与を受けて各自治体が作成した公物管理条例の分析を、最優先の研究課題として設定する。この自治体への譲与によって、法定外公共用物をめぐる紛争についての従来の判例の基礎が大きく変化しており、それが当該条例の規定に正確に反映されているのか否かを検証したい。現在の印象では、譲与の意義の理解が不鮮明な条例が多いように感じられるが、先進的な条例の検討をしながら、自治体にとっての譲与の意義を鮮明に析出したいと考えている。 ついで、公物の境界画定をめぐる住民訴訟(自治体が境界画定をおこたり、私人による道路等の不法占有を放任していることを問題とする3号請求)が多発しており、裁判所の結論も一致していない。この境界画定をめぐる住民訴訟の動向を整理し、法的検討を加えた。 そして、公物の未登記によって発生している問題については、さらに事例を収集して、検討を進化させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費が追加配分で認められたことから、研究開始時期が大幅に遅れ、計画通りの支出ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度において、研究開始時期の大幅な遅れで実施できなかった現地調査や文献の収集を、今期の前半において集中的におこなう予定であり、このために次年度使用額を使用さていただこうと考えている。
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