研究課題/領域番号 |
16K03305
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
首藤 重幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00135097)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 公物 / 登記 / 里道 / 法定外公共用物 / 公物管理条例 / ドイツ公物法 / 不明裁決 |
研究実績の概要 |
今年度は、公物をめぐる紛争が裁判や住民監査等の手続を経て、一応の解決・確定がなされた後に、当該紛争の当事者である自治体が、その事後処理をどのようにおこなったかを、世田谷区と金沢市の事例を素材にして検討した。とくに、この両自治体では、事後処理として公物管理条例の改正という方法での対応がなされていることから、当該条例改正を審議した自治体内部の委員会での議事録を利用しながら検討をおこなうことができた。この二つの条例改正には、新たな法的問題が含まれているように思われる。 さらに、国から市町村への法定外公共用物の譲与をうけて、各自治体は法定外公共用物も規制対象とする公物管理条例の創設・改正の作業を進めている。この新条例の一部の検討をおこなったが、従来の市町村から出されていた法定外公共用物の管理・規制権限の拡大の要望からすると、若干、貧弱な内容にとどまっている感じをもった(さらに、多くの条例を検討したのち、学問的評価をおこないたいと考えている)。 また、2017年5月に沖縄県と島根県の土地家屋調査士協会において、「公物と登記」に関する講演をする機会を得たが、その講演の後に、両県での公物紛争の実態を聞かせて頂く事ができ、有益な研究についての素材を得ることができた。とくに、沖縄県では、里道をめぐる紛争が多様に存在することを確認できた。 ドイツにおける行政法の観点からの公物法研究について、近時、ドイツでの新たな研究成果をみることはほとんどなかったが、2017年に久しぶりの本格的な研究論文(単著)が公刊された。この論文の検討を中心に、ドイツ公物法研究の最先端を把握する作業を開始することができた。 所有者不明土地の問題が深刻化しているが、所有者不明土地の収用手法である土地収用法の「不明裁決」の検討をおこない、その検討成果を自治体等での研修で報告する機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究目標に設定していた法定外公共用物の国から市町村への譲与をめぐる紛争につき、譲与を受けた自治体と住民との裁判的紛争の法的分析と、その裁判の結果をうけて当該自治体が講じた対応(条例改正等)の検討という課題を、ほぼ達成することができた。 さらに、いまだに残されている公物をめぐる紛争の具体例を、とくに沖縄県で確認できたことで、これからの新たな研究対象を捕捉することができたことも大きな成果であると考えている。 そして研究目標としていた所有者不明土地の問題を、「公共施設と登記」という観点から検討するという課題は、土地収用法の「不明裁決」の研究をおこなうことで、かなりの程度において達成できたと評価している。 今年度の研究目標としてはいなかったが、ドイツ公物法研究に関する興味ある文献がドイツで公刊され、これを読み始めることができたことは、本研究課題の達成に極めて重要なことであると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度が本研究課題の最終年度になっているので、これまでの成果をまとめる作業とともに、ドイツ公物法研究の最先端を把握する作業につき、成果を出したい(公物紛争に対してなされた自治体の事後処理の行政法的検討については、近時、研究成果を公表したいと考えている)。 沖縄県には、里道をめぐる問題が多様に残されており、再度、沖魔での現地調査を実施したいと考えている。この現地調査ということでは、工夫された積極的な内容をもつ「公物管理条例」を制定・改正した自治体についても現地調査を実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主要な要因は、沖縄県での公物紛争に関する現地調査、さらには注目すべき公物管理条例の改正をおこなった自治体への現地調査を、ともに実施することができなかったことである。 以上の現地調査を今年度において実施することに、本件次年度使用額を使わせて頂く。
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